風の時代を読む研究会
2025.07.04 風の時代を読む研究会(第4回)
EUとイギリスの経済展望
ードイツ、日本と同じくハードからソフトへの転換で遅れー
令和7年7月4日、第4回目となる「風の時代を読む」研究会を安部悦生明治大学名誉教授を迎え『EUとイギリス経済の展望』と題する講演を聴いた。EUの立ち位置、経済の現況、今後のプラス要因・マイナス要因などが話された。

講師の安部悦生先生「イタリアの賃金が日本と同じく低い」という。左から小平和一朗、下斗米秀之、森下あや子(座長)、安部悦生講師、西河洋一、長谷川一英、吉池富士夫
講 師:安部悦生(明治大学名誉教授)
参加者:森下あや子(座長、日本経済大学大学院教授)、
西河洋一理事長、
吉池富士夫(芝浦工業大学理事)、
長谷川一英(E&K Associates代表)、
下斗米秀之(明治大学経済学部専任准教授)、
小平和一朗専務理事、
松井美樹(事務局・理事)
【安部悦生氏の講演から】
22年から本格的なウクライナ戦争
20年からウクライナとロシアとの戦争が起きた。ヨーロッパは局地的な戦争はあったが、全面戦争は70年ぐらい無く、ヨーロッパは平和だった。それが2022年から本格的なウクライナ戦争で、EU自体もNATOも変わった。
ウクライナの戦費は、ウクライナへの支援というのでアメリカは半分を負担していて確かに多い。EU機関と各国を足すとアメリカと同じである。トランプは軍事支援を削減すると言っているが、今のところ半分の約七百億ユーロを負担している。
天然ガスを止められダメージ
ロシアからドイツに入っていた天然ガスのパイプラインを止められゼロになった。戦争が起きる直前には、ロシアから半分入っていた。他から調達しなければいけなくなった。コストが上昇した。
マルクの切り下げになった
EU経済が割と好調だったのはドイツが中心になってドイツ1人勝ちと牽引したからだ。マルクとかフランとか各国の通貨をユーロ圏で統一したとき実質マルクの切り下げになってマルクが得した。ギリシャやイタリアは損をした。輸出競争力がなくなった。
ドイツは、ユーロに対して実質的なマルクの切り下げになったので輸出競争力が強くなって黒字が貯まり1人勝ちと言われていた。
産業構造がハードからソフトに
EV化が進み、中国では、今年の新車の販売の5割位がEVになった。
ドイツはガソリン車が強かったがハイブリッドあまり強くなくガソリン車は強かったが中国市場で不振になった。
もう一つはヨーロッパも、環境問題、脱炭素でEV化を進めた。フォルクスワーゲンなどは、排気ガスを減量するディーゼル化、クリーンディーゼルでやろうとしたが、不正などいろいろなゴタゴタがあり、クリーンディーゼルは駄目だとなりEVに切り替えた。
日本よりは積極的にやったが、電気自動車の開発はなかなか進まなかった。国内でも海外でも、自動車産業が不振になってきた。
ドイツも日本もついていけない
電気機械産業から電子産業の切り替えがドイツうまくいかない。日本も頭がついていかない。日本とドイツは、非常に似ている。
ドイツもそんなにコンピュータ産業が強くないし、日本も強くない。産業構造がハードからソフトに変わっていったというのについていけなかった。
自動運転などは典型でソフトウェアをいかに使って、性能を上げるかと切り替わってきている。エレクトリックメカニカルの産業に強いので、日本もドイツもそこで安住した。そこはうまくない。
EUにはブランド力がある
経済展望はどうなるのか。フォルクスワーゲン、BMW、ベンツなどのガソリン車は強かった。ブランド力はまだ持っているので、ある程度は生き残る。
ファッション産業はイタリア。ブランドというとヨーロッパなので、ファッション産業や家具などブランド力は残って、ある程度継続する。
比較的強いのは製薬でロシュがある。ドイツ、スイス系のケミカルは強いので、簡単には覆されない。製薬・化学でヨーロッパは強さを発揮できる。
オランダのASMLが元気
オランダにASMLという半導体製造設備会社がある。極紫外線露光装置を作っている。露光装置は日本のニコンとキヤノンとASMLの三社が強かったが、この極紫外線でさらに最先端に行くときに、日本のニコンとキヤノンはいかなかった。国内の半導体がまだ強かったのでそちらで十分いけると踏んでいかなかった。
ASMLは最先端をやらなければ生き残れないのでそれをやって世界で一社になった。先端の半導体製造設備も独占した。
最近中国とのレアアースの交渉でASMLはアメリカに従って中国の企業に半導体製造装置を売らない。中国はレアアースを供給するからアメリカ並みに製造設備を厳しくするなと条件交渉をやっている。レアアースと半導体製造装置がバーターになっている。
観光は南フランス、南欧など
観光は、南フランス、南欧、それからフランスも強い。かつて日本のツーリスト結構いるなと思った。今は中国のツーリストがこの10年でたくさんヨーロッパに来ている。70年代80年代は日本人も少しはいたが、その比じゃない。ボンマルシェとパリの有名なデパート行くと、中国人が買うコーナーとその他がわかれている。
スイスのルツェルンという小さな町だが、中国人の観光バスで来ていて行列している。これは善し悪しでヨーロッパ人はうんざりしている。
移民問題に発する極右の増大
これは政治的な話ではあるが経済展望も絡む。政治問題としては難民問題に対する右翼、極右の増大が歴然とヨーロッパはある。
政治的な右旋回、保守党が右に引っ張られる。中道もさらに右に引っ張られる。票が取れないということで右翼、極右が増大する。中道も右寄りになり右旋回が起きる。これは政治問題、経済問題としては非常に大きな問題である。ドイツ、フランス、オーストリア、スウェーデン、デンマーク、イタリア、オランダ、イギリス、みんなそんな感じになっている。

左から安部講師と研究員の長谷川、吉池、西河、森下座長、下斗米、小平
質疑応答
森下(座長):質問とかコメントとかいかがでしょうか。
(長谷川):EUにスタートアップはあるのか。
(講師):日本もそうだがスタートアップ支援を色々やっているが、アメリカ程うまくいっていない。EUはそういう産業政策が好きなのでやっている。
(長谷川):アートと産業を繋ぐみたいなことをヨーロッパは結構盛んにやっている。
(講師):アート系は、イタリアが強い。「文化と営利」(注1)となると、文化はイタリアが強い。イタリアの民間の大企業はフィアットぐらいである。中小企業のレベルでは活発である。アート系はイノベーティブなところなのでイタリアに見習いたい。アート絡みで大きな会社はベネトンである。
イタリアも以前は鉄鋼などもあったし、工作機械も意外と強かった。工作機械と言うと日本とドイツと、ハイレベルなところはアメリカが強い。中間レベルの工作機械はドイツと日本が強い。イタリアは興味があって調べたことがあるが独特である。
イギリス、フランス、アメリカは賃金が高いが、イタリアと日本の賃金が40年近く上がってない。
ブランドを中国は使って自国で生産
(下斗米):ヨーロッパ車には、ブランド力がある。そのブランドを中国は使うことをしている。
(講師):MGやランドローバーでばイギリスから工場をみんな中国に持っていって廃墟になった。ローバーはロングビーチやリバプールで以前は作っていた。
(吉池):衣食住のうちの住は。
(講師):住むほうは家具も含めヨーロッパは強い。家具産業はイタリア製家具と北欧家具である。日本で普通買うのは、中国製家具である。イケアとかは中国で作っているのが多い。最初はスウェーデンでやっていたが、中国に工場を作って最近は中国で作っている。安い北欧家具はそうだが、高いものはヨーロッパで作っている。
ドイツ不調の真の原因を知りたい
(小平):ドイツ経済がガスのエネルギーが供給停止されただけであれだけ経済力が低下するのか疑問である。ドイツは色々な技術を持っている国なのに疑問である。
(講師):私の持論だが、ハードからソフトに来ている、そこの切り替えがうまくいっていない。日本と同じである。コンピュータは弱いし、半導体も弱い。
(吉池):モノ作りじゃなくてコト作りだという先ほどのお話か。
(講師):基本はそこだと思う。
ドイツが戦争をバックアップ
(小平):ウクライナ戦争とEU。基本的にEU、ドイツがロシアを潰したいという思いが強いのか。EUがサポートしているからウクライナ戦争は存在している。
(講師):そうである。
ロシアは潰れなく、維持している
(吉池):ロシアはガスを遮断して外貨獲得が出来ているのか。
(講師):インド、中国は石油を買っている。天然ガスを液化して送っているかはわからない。
(西河):日本はロシアからのガスが停止されていない。あれを止められたら日本は困る。
(講師):展望を研究しているがEUもなかなか。潰れることはなくてそれなりに維持している。プラス要因も結構ある。
米国とロシアで戦争をしている
(小平):ウクライナ戦争を終わらせるのに、米国とロシアだけで話が進んでというのは、ウクライナが統治能力を失っているというのが前提にあると考えていいのか。
(講師):事実上、ゼレンスキー政権は、アメリカが支援する金で作った政権である。戦争するには大体ひと月60億ドルかかる。アメリカ、EU、日本で分担している。
(小平):資金出しているから、引いたら停戦するということか。
(講師):そういうことになる。
ソ連は東部4州が欲しかった
(吉池):当初は、4州でなく全部欲しかったのではないか。
(講師):いいえ、私の見方は最初から東部4州である。ミンスク合意はあそこに自治権を与える。4州ではなく2州に自治権を与えて住民投票をやるというのがゼレンスキーが和平派で出てきたとき、クリミアは別であるが、提案したのはゼレンスキーだった。
ところがゼレンスキーは、モスグリーン派、テロ集団にやられかけて、それで変えた。多分プーチンは250万の都市を攻撃するとしたら数十万の兵士を出さなければいけなかったはずがキーウを攻撃した時、10万人である。
その後、イギリスの首相が乗り込んできて、武器は好きなだけ提供すると言ってバイデンもプーチン体制を壊さないと駄目だと言ったので長期戦に入った。