技術経営人財育成セミナー(第2回)変革期のリーダーが学ぶことは何か

エンジェル投資家に求められる能力要素

平 強(たいら・つよし)( Tazan International CEO)

日時 2012年11月14日(水) 17:00~19:00 (講演90分、質疑30分)
場所 一般財団法人アーネスト育成財団事務所内 アクセスへ
参加費 3,000円(終了後、缶ビール程度の懇親会費用を含む)
定員 最大18名(定員になり次第締め切ります)
申込方法 セミナーは終了いたしました。
主催 一般財団法人アーネスト育成財団

パンフレット(72KB)

平氏の著書『エンジニアよ 挑戦せよ』の中に「金融畑出身者が多いベンチャーキャピタル業界には、必ずしも技術を本質的に理解して判断する人間ばかりいるわけではない」とあります。エンジェル投資家とは、「スタートアップの会社で創業者の相談に乗り、どう資金調達するか、会社運営をどうするのか、戦略をどのように立てるか、製品開発の方向性をどう決めるか等を話し合う」とも書いてあります。

成功には、成熟した人格を持ち若者をリードしながらテクノロジーの可能性を広げ、テクノロジー自体がビジネスとして世の中に求められるものであるとの判断力、諦めることに無い信念に基づく指導力などの条件が整っていないといけないという。

アーネスト育成財団は、平氏のような「エンジェル投資家の育成」を目指しています。エンジェル投資家に求められる能力要素とはについて、最近の事例などを加味してお話し頂きます。

【講師略歴】

平 強(タイラ ツヨシ)氏 <ホームページ:http://tsuyoshitaira.com/
1939年鹿児島県奄美大島与論町生まれ。電子機器、半導体メーカーを経て、米国サンヨー・セミコンダクターの社長、会長。96年にベンチャー投資会社タザンインターナショナルを米国カリフォルニア州シリコンバレーに設立、同年スタンフォード大学の大学院に通う数人のインド系学生が開発した検索ソフトに75万ドルを投資し、2年後アマゾン・ドットコムに2億1000万ドルで売却した成功モデルを持つ。その後も確立の高いエンジェル投資活動に取り組んできている。
(著書)『エンジニアよ挑戦せよ』日経BP社(2004)

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米国、シリコンバレーのエンジェル投資家平強氏講演

『エンジェル投資家に求められる能力要素』

当財団のベンチャー投資のモデルに考えているのが米国カリフォルニア・シリコンバレー在住のエンジェル投資家の平強氏である。「日本でベンチャーがなぜ育たないのか」という疑問もあり、設立前からアドバイスを頂くとともに、財団設立後に講演をお願いしていた。
日本滞在中の平氏と1週前に日程調整ができ、平成24年(2012年)11月14日(水)の午後5時から当財団内の会議室でセミナーを開催した。司会、進行は専務理事の小平和一朗が担当した。

セミナー写真

エンジェル投資家である平氏は「シリコンバレーには、人、起業、マネーと企業がある」と説明。さらに「本日参加の経営経験者の経歴を見せてもらったが、みなさんが若い起業家を支援し、育成すれば、日本でもベンチャーを育てることは可能だと思う」と話す。

セミナー写真

「投資を決めるのは人物である。お金はついてくる。
目が燃えているかが重要だ」と語る平氏。

講演概要

講演内容詳細(644KB)

先ほど参加者の名簿を見せて頂いたら、皆さん社会で貢献、活躍された人達ばかりで、むしろ私の方から色々なことを聞きたいと思っている。
非常に楽しみにしている。私の話が終わったら私の方から逆に質問したい。東京理科大学の大江修造教授とか、リコーの坂巻資敏元常務執行役員とか、色々と経験豊富な方ばかりで、非常に楽しみにしている。

お金を出すエンジェルになる人を見付ける事が大事

「エンジェル・インベスタを育てるのはどうしたら良いか」というのが、小平和一朗財団専務理事からの質問だが、それは無理な話で、エンジェルになる人を見付ける事が大事で、例えば西河洋一理事長(㈱アーネストワン代表取締役社長)のような人をたくさん集めてくる。投資家と一緒になって、若い人を育て上げることを考えれば良い。これだけのスタッフがいたら、このスタッフが1社か2社のメンターになって経営を指導すれば、必ず成功するような気がしてならない。

最初に投資したサーチエンジンの会社が成功し、9倍になった

BusinessWeek写真

BusinessWeekの表紙にジャングリーを起業した仲間と掲載された

私は三洋電気の半導体事業部での仕事から、テキサスインスティルメント・ジャパンに移り、それからアメリカのフェアチャイルドセミコンダクターに1972年に渡った。その後アメリカのサンヨーの半導体社に再度参加して、サンヨーの半導体をアメリカで売り歩く。当時サンヨーは、半導体のスタートアップ何社かに金を出して育て上げた。投資をして、育てることの重要性が分かり、サンヨーをリタイヤしてからインベストの仕事を始めた。
2000年のバブルの時に投資をした、ジャングリーというサーチエンジンの会社が成功し、それをアマゾンが200億円で買ってくれた。丁度、バブルな時期でアマゾンの株が9倍にもなった。お金が出来たので、エンジェル投資家になって投資を始めた。
シリコンバレーが、どういう形で動いているか。ベンチャーキャピタルが、どう動いているか。エンジェルとして、どういうのに投資をして、なぜだめだったかの事例を話したい。

シリコンバレーには、リスクマネーと人財がある

シリコンバレーには、お金がある。ベンチャーキャピタルのお金、これがシリコンバレーだけでも年間1兆2千億円位の投資がされている。ベンチューキャピタルの投資は保証もいらないし、潰れたら、潰れたで仕方ないと言うリスクマネーである。
次に人財がある。スタンフォードやUCバークレーなどの大学があって、そこの学生などが起業を始める。米国は、人種のるつぼである。起業する人達の30%がインド人で、すごい大きな力になっている。
成功したインド人が次の人を育てるための「Taiオーガナイゼーション」という組織があって、次の若い人のために経営指導をしてくれる。そして、その内の何名かがメンターとして経営を指導してくれる。場合によっては、数名がシードマネーを出したりしてくれる。このような互助組織があることが、インド人の起業が多い理由でもある。

Tie Conference写真Tie Conference写真

若い人たちを育てるためのTie Conferenceの様子で、2007年に出井伸之ソニー元CEOにキーノートスピーチをしてもらった時には、4,000人位の人が集まった。

日本は5千万円程度で、資金提供が少ないことが一番の問題

アメリカのベンチャーキャピタルは、年間で約4兆円の投資が行われていて、その内の約1兆円がシリコンバレーで、45%、ボストンで11%。ほとんどシリコンバレーに集中している。米国の企業のスタートは、シリコンバレーがメインである。年間で大体4千社にベンチャーキャピタルから投資がされ、それに近い投資がエンジェルからされる。今年の第3四半期の投資は1社平均7億円である。
日本のベンチャーキャピタルのトータルの投資は、年間で2千億円で、何社が投資を受けられるか。これでは1社当たり何千万程度しか投資ができない。日本では3千万円とか5千万円しかお金が行かないので、30名も雇えば、1年で無くなる。
日本のスタートアップベンチャーに対する資金供給が少ないことが、一番の問題である。

Investment

Venture Capital の Investment

シリコンバレーのルーツはノーベル賞を受賞したショックレー

シリコンバレーは、どこから来たかというと、そのルーツはノーベル賞のショックレーで、彼が半導体を作ろうというので、ショックレーセミコンダクター社を作り、8名の優秀な若い人達と始めた。
下記画面には、後にインテルを作った、ロバート・ノートン・ノイスやアンディーグローブが写っている。ショックレーは、エキセントリックな方で、頭にきて全員辞めてしまった。この8名のことを「8名の反逆者」言う名前が付けられた。
シャーマン・フェアチャイルド氏に頼んでお金を出してもらって作った会社が、フェアチャイルドセミコンダクター社で、シリコンバレーの発祥の地となる。半導体が色々な産業の基になって、PCが出来て、コンピュータが出来て、そういう形でアメリカのベンチャーを育てる原動力になっている。

ショックレー写真

ショックレーと、後にインテルを作った、ロバート・ノートン・ノイスやアンディーグローブが写っている

インテルプロセッサーの基は、日本のビジコンの嶋正利の提案から

4004 processor写真

Viscom向けに開発された4004 processor

ロバート・ノイスは、ICのパテントを取った方で、フェアチャイルドを作った後にインテルを作った。
インテルが世界的な会社になる基は、日本のビジコンの嶋正利が、「毎回新しいICを作るのではなく、プログラムでICを変えることが出来ないか」とのアイディアにある。下図が最初のマイクロプロセッサー4004である。
小さなウエハーから、300mmまで出来るようになった。ムーアが半導体の集積度は、毎年倍、倍になるという予測をした。その成長予測、まだ乗っている。半導体の技術が伸びて、それに応じてコンピュータが伸び、全ての産業の基になった。半導体は、日本の大きな産業にもなった。

童話「桃太郎」に日本のベンチャー精神がある

桃太郎の絵

「桃太郎は、日本のベンチャーの原点である」と語る。

この絵は、桃太郎の絵である。桃太郎さん、おばあさんが黍団子(きびだんご)を作ってくれて、黍団子を資金として、雉(きじ)と犬と猿を雇とった。雉は空から偵察にいき、犬は地上から敵を嗅ぎ付け、猿は木の上から奇襲にいく。これが日本のベンチャーの原点である。
桃太郎は、鬼退治して、宝物を沢山持って帰ってくる。資金は、おばあさんの黍団子であった。そういう意味では、日本にも昔からベンチャー精神があった。
井深大とか、本田総一郎の起業家精神は素晴らしいものがある。素晴らしいアイディアで、次々新しい商品を開発していた。豊田佐吉を含めて、日本のベンチャー精神は素晴らしい。

青春のある時期に凄いプロジェクトをやったことは良い経験をした

ジーン・アムダール(Gene Amdahl)が、アムダールコンピュータという会社を作り、IBM360のコンパチ品を作り大成功した。その後、この会社を富士通に売却した。
アムダールは、その後このIBM360の全機能をワンチップに入れる会社、当時、最大のスタートアップ企業トライロジーを230億円の資金を集めて作った。
360の機能を全部入れようということをやった。2.6インチすなわち、6㎝角のICを作った当時の技術では、ウエハー1枚でIC1個であった。ところが、すごく電流を流さないと性能が出なく、1KWもパワーを食い、結局ICはできなかった。
ここで優秀なエンジニアが働いていた。後に「自分は青春のある一時期に凄いプロジェクトを一緒にやったことは、非常に良い経験であった」手記を書いている。そういう人達が、次のテクノロジーを支えた。

ジーン・アムダール写真

ジーン・アムダールは、IBM360 Main FrameをOne Chipに入れる挑戦をした。

エンジェル投資家に求められること

エンジェル・投資家に要求される一番大事なことは何かについて話をしたい。

(1)我が身を切って助けてこそエンジェル

ある冬にデトロイトで、飢え死にしそうな人が歩いて来た。雌鶏(めんどり)さんと豚さんが一緒に歩いていて「どうして助けてあげようか」と話す。
雌鶏さんは「私は卵を産んで助けてあげる」(I promise eggs ) と言う。
雌鶏さんに「豚さん、あなたはどうするのか」と問われて、豚さん、はたと困って"I will commit bacons. "(私は身を切ってベーコンを提供します)と答えた。
「エンジェルのコミットとは、我が身を切って助けてこそエンジェルだ」とボストンで聞いた。

(2)イノベーションのジレンマ、投資家は世の中の進歩を良く見る

テクノロジーが徐々に上がっていくが、ある時急に上がることがある。
DECのミニコンピュータは、1台100万ドルしたが、半導体製造のプロセスコントロールで使われていた。ある時、インテルのCPUが3GHzとか5GHzのスピードが出るようになると、DECと置き換えることが出来るようになった。しかも値段は、100分の1位で出来てしまう。ミニコンピュータで有名なDECが、潰れてしまう。
イノベーションのジレンマということで、世の中の進歩を良く見なければならない。ベンチャー投資家は気を付けないといけない。

(3)鮫のステーキでチャレンジする人を見分ける

「この人は、チャレンジする人かどうか」の見分け方の話をしたい。
アメリカは鮫のステーキを普通に食べさせる。日本からエンジニアが来ると、「鮫を食べに行こう」と連れていく。内々で相談しておいて、「鮫を食べよう」と言う。「どうする」と聞くと、「鮫なんか食いません」が一つ、「それはおもしろいね、食べてみましょう」という人とがいて、鮫を食べた人は日本に帰ってから一生懸命喜んでアメリカの仕事をやってくれる。
鮫のステーキを食べるかどうかで判断をしている。

(4)いつも先を見ながら仕事をする

スティーブ・ジョブスが書いてくれたLCDの仕様

スティーブ・ジョブスが書いてくれたLCDの仕様

スティーブ・ジョブスとも良く仕事をした。
LCDのテクノロジーは向上していったが、最初は、5インチと小さいLCDしかできない時、エンジニアと話していたら彼がスティーブを呼びにいく。ネクストコンピュータにいたころで、彼が飛んで来てディスプレーの構想に感激して、スペック(下図に示す)を書いてくれた。
1,024dpiで、グレースケールは4階調で、そして250ドルであればいくらでも買うという。「いくらでも買うでは工場が動かないから、100万個買うと書いてくれ」というと、「たくさん買う」とごまかされてしまった。これがスティーブ・ジョブスのサイン(画面に示す)で、88年のこと。彼のフォーキャストはすごくて、結局ディスプレーは仕様の通りになった。スティーブはいつも先を見ながらやっている。
今回のi-Phoneシリーズも、i-Phoneを作って、次々とi-Phone3GS、i-Phone4、i-Phone4s、i-Phone5、それが全部前のものとの互換性を保っている。スティーブ・ジョブスの戦略がここで生きていて、それだから世界一の会社になった。

(5)デューデリエンスで、「お前のパートナーは大丈夫か」と聞く

絵

「友達を置いて逃げるやつと、商売しては絶対駄目だよ。白状なやつとスタートアップしたら絶対成功しないから仕事するのは辞めろ」と熊が言ったという。まさかの時の友が、本当の友である。

スタートアップの会社をつくるので、パートナーと山に行って将来どうしようかと話しをしょうと出掛けた。そこに熊が出てきた。「ヤバイや、一緒に死んだまねをしよう」と言ったが、彼は一人逃げて行ってしまった。しかたないので死んだまねをしていたら。熊が来てゴソゴソと何か喋って、出て行った。
その後、逃げた彼が戻って来て「熊が何か言っていたが、何と言っていた」と聞いた。「友達を置いて逃げるやつと、商売しては絶対駄目だ。白状なやつとスタートアップしたら絶対に成功しないから、仕事するのは辞めろ」と熊が言ったという。
デューデリエンスする方法は色々あるが、「お前のパートナーは大丈夫か」と聞く。「分からなかったら熊のところに行っておいで」と言うことにしている。

(6)ネバー・ギブアップ、諦めては駄目

鳥が蛙を飲み込もうとしてやっていて、蛙は30分位戦って、30分で抜け出した。スタートアップした人に、「絶対ギブアップしてはダメ」という時に、この絵を見せている。根性が大切である。

鳥と蛙の写真

この図は、鳥が蛙を飲み込もうとしてやっていて、蛙は30分位戦っていて、30分で抜け出した。

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質疑応答

知らないことはやらないが、知らないことでも一緒に戦略を考えることはある

質問(山中隆俊 富士通研究所):投資の対象はITがメインか。

回答:私はIT屋ではない。IT系は原則としてやらない。ジャングリーは、ITであるが、そこにいたためにやった。半導体関係とか、今でもハードウェアの関するところをやっている。ITは付き合いでやることはあるが、それ以外はやらない。ソフトウェアは知らない。知らないことはやらない。今は、ソーラーパネルのインバーターを開発しているところに投資している。コンピュータのセキュリティー・システムは知らないが、一緒に戦略を考えている。

ジャングリー設立した仲間との写真

ジャングリー(サーチエンジンの会社)を設立した仲間と、今も年に1回程度、自宅に集まっている

Do you have a fire in your eye?

質問(坂巻):エンジェルは、全てを分からないが育てられる。コインをトスして決めると事例で言われたが、判断のコツはどういうところか。

回答:先程の熊の話ではないが、ソニーの井深大と盛田昭夫とか、本田自動車の本田宗一郎と藤沢武夫とのコンビが良かった、というチームワークが大切である。ティブコという会社が、リアルタイムOSのモニターを作り、ゴールドマンサックスに売りにいくときに、会長(クリントン時代のルービン財務長官)があなたの会社の特徴は何かと聞いた。ティブコの社長は、We have a fire in our eye. と言った。この一言でルービンさんは気に入って、ディブコのモニターを採用した。私は ジャングリーの連中は目がキラキラしていたし、チームワークが素晴らしかった。

日本のために、日本の技術が世界に採用されるところで今後は頑張りたい

質問(奥出):先生がアメリカをベースにやろうとしたのは、なぜか。

回答:私は、半導体屋だったので、フェアチャイルドセミコンダクターという老舗の半導体の会社に行きたいと思っていたら、たまたまチャンスがあってそこに行けた。
4004を作った3年後で、インテルもこれからできる前であった。アメリカの人たちの公平さ、あるいは良いものは良いと評価してくれて、商品を買ってくれる。またそしてフロンテヤ精神に富んでいること、チャレンジをし続けることそんな気風が良くて結局アメリカに落ち着いてしまった。
でも、日本のために日本の技術が世界に採用されていくところで、今後は頑張りたいと思う。皆さんの企画に、積極的に参加させて貰いたい。

人が一番で、金は製品が良ければ後からついてくる

質問(吉田廣 日本電気):技術は社会の流れがあってその評価は何とも言えないが、人が重要であるように思える。

回答:そう、人が一番で、金は製品が良ければ、後からついてくるものだ。

エンジェルになるには、一定以上の資産と収入がないとだめだ

質問(小平):用語の定義だが、日本ではエンジェルの定義が違って捉えられている。米国におけるVCとエンジェルの違いと定義を教えて欲しい。

回答:SEC(アメリカの証券取引委員会)のルールで、エンジェルは投資する資格が必要である。それは年間250万ドル(1億8千万円)の収入があること、或いは100万ドル(8千万円)の資産があることが条件になる。資格のない人から投資を受けると違反になる。また、僕の場合は、投資先を最初から手伝うが、エンジェルだからと言って皆が手伝うわけではない。失敗したからといって、エンジェルもベンチャーキャピタルもお金が返ってくることを求めない。エンジェルは個人であり、VCは組織である。日本で10万ドルまでは保証するというエンジェル税法が出来たが、10万ドルでは少なすぎる。沢山の人達から集めないと事業資金にはならない。個人1人が10万ドルを入れても、大した事業は出来ない。

僕は経営者だから、どこもつぶしてはならないと思うが

質問(西河洋一 当財団理事長):私は投資家、経営者として、今の会社に入ったときは社員が9名で、借金が10数億円あって、どこも相手にしてくれない状態だった。先生の最後のスライドに「根性」があって、あれで生きてきたと思う。会社をつぶすということは、経営を諦めたことだと思う。目がギラギラして、こいつは死なないというのが良いベンチャー経営者だと思う。先生は、投資家の立場で「99%がダメでも1つとれれば良い」というが、僕は経営者だから、どこもつぶしてはならないと思っている。

色々な手を使って持ち堪える対策をする

回答:アメリカの場合は、エンジェルでも、VCでも、十分な金を入れる。何かICを開発しようかと思えば10億円ぐらいの金がかかるので、そこまで集めて商品の開発を行う。そこで開発したものが売れないか、或いは競争相手が優れたモノを開発してしまえば方向転換を図らなければならない。その時、また資金を集めなければいけない。
特に新しい商品の開発は、市場に出して見ないと分からない。ICの開発、通信機器の開発など、市場の様子で必ず売れるとは限らないので方向転換は絶えず余儀なくされる。この時何が大事かは、チームの夢が一つになっていることだ。それがしっかりしていれば、色々な手を使って持ち堪える対策をする。この場合、社長の考え方というよりも、夢を共有したグループの総合の考えである。夢を共有したグループでどこまで頑張るかだ。
しかし、経営と資金は別で、もし追加の投資を受け入れられない場合は、最後の手立てをする。それは夢を共有した者たちの自己犠牲をどこまで強いるかである。

日本では、一度失敗すると、後は誰も信用しないメンタリティがある

西河さんの「日本のメンタリティとして会社は潰してはいけない」というのは良く分かる。また「一度失敗すると、二度とたちあがれない」というのが、日本のメンタリティの底にあるものだと思う。失敗すると、後は誰も信用しないメンタリティがある。
アメリカでは、失敗も経験の内で、どんな失敗をしたかが履歴になり、評価の対象になる。ですから、失敗をした人達こそ、また次の起業を考える。

必死に最後まで守るが、給料が払えなくなったら早めに会社を閉める

また、倒産した企業で何をやっていたか、どんな経験をしたかも、また勲章になる。私は沢山の会社に関わり、その大半が潰れている。ですから、経営者は会社を倒産させてはいけないという縛りは、余り感じない。従業員も「また頑張ろうね」で終わる。ですから、99殺して1社を成功させれば良いという感じではない。どの会社一つでも、必死に最後まで守るが、給料が払えなくなったら早めに会社を閉めた方が、従業員が次のステップに行き易い。
資本と経営が、はっきりと分離されているので、会社を閉めることは、それほど気にしていない。最後まで、望みを持って根性で支える。

創業時からのエンジニアは、最後まで頑張ってくれる

例えば通信関係の会社の例で説明すると、最後は会社をたたんだが、その途中までの様子では何とか生き延びられそうなら、キイのエンジニアに何とか頑張って貰う。この時は税金、労働法などがあるので、皆と相談して最低賃金で会社に残るように頼む。すなわち時間給$5とか、$6にしてもらう。もちろん秘書とか一般の作業員は辞めてもらう。
一緒に頑張ってきた技術屋は、何とか頑張ろうとして、飲まず、食わずで頑張る。アメリカの場合は、奥さんが働いているので、この最低賃金でも頑張れる。そして、この会社の場合は、ほぼ10ヶ月持たせたが、ついに開発した商品は売れなかった。業界が立ち上がらなかった。最後に「皆でまた頑張ろうね」と言って盃を交わして分かれた。創業時からのエンジニアは、やっぱり最後まで頑張ってくれる。社長のオブリゲーショウンというより、創業グループのオブリゲーションが基になる。創業グループの夢の追い方で、彼らはまた次の夢を探して仲間を探す。

金をどう使うかをボードメンバーが指導する、贅沢し始めたら徹底的に言う

質問(西河):日本では(投資資金を手にすると)事務所を豪華にするとか、良い車に乗るとかという話が多い。シリコンバレーではどうなのか。

回答:やらせない。前もっては言わないが、やり始めたら、げんこつを食わせにいく。原則的には、寝袋も持って会社で寝泊まりして頑張るというのが、スタートアップのメンタイリテイである。金をどういう風に使っているかは、ボードメンバーが絶えず監視している。贅沢し始めたら徹底的に言う。(事業のための)金が無いと、どうしようもない。

宇宙ビジネスの話

スペースXという宇宙ロケットの会社。100億円という自分のお金を入れて、物理屋だが、ロケットを大きな工場で作っている。ほとんどが、航空・宇宙をやったことが無い人達で、ナサから来た人達も入っているが、宇宙ロケットを開発した。宇宙ステーションに荷物は運ぶためのロケットの開発に成功し、ナサと宇宙ステ一テイションへの荷物を運ぶ契約をした。南アフリカ出身のイーロン・マスク個人が始めた会社である。彼は、ペイパルというインターネット・ペイメントのソフトウェアを開発した人で、この会社がイーベイに買収されて数百億の金を手に入れた。テスラモーターを設立して、電気自動車の会社を起こし、更に100億円を投下してスペースXを設立した。すごい夢を追掛けている。それに素人がロケットを作って、これから宇宙に行くという。夢があれば何でもできる。
宇宙工学を知らない連中が本で勉強し、初めて凄いロケットを作り出した。皆が勉強しながらやっている。シリコンバレーのチャレンジ精神は凄い。

鳥と蛙の写真

「シリコンバレーには、凄いことに取り組むベンチャーがある」と、イーロン・マスクが始めた電気自動車の会社(左)とロケットを打ち上げる「スペースX」(右)という会社を紹介してくれた。

ナンバー10と言ってくると、はじくことにしている

質問(大江):先ほどのジャングリーのメンバーは、自分は知らなかったが、IITの優秀な学生であることが後で分かったとは、どういうことか。

回答:ソフトウェアを作っていたので優秀なことは分かっていたが、どれ位かは知らなかった。インド人が「投資してくれ」と沢山来る。皆が「IITボンベイで10番だった」とか、「IITモンバイで10番だった」とか言うので、最近は、ナンバーテンという方が来るとはじいている。能ある鷹は爪を隠す。そこを見抜きたい。

教育の違い、アメリカの起業家は大きな目標を持ってチャレンジ

質問(佐竹右幾 サンシン電気CTO):米国がアグレッシブで、日本が体たらくの差は何か。

回答:チャレンジするという気持ちが少ない。シリコンバレー中で比較的インド人がチャレンジする人が多い。大きな目標を持ってチャレンジしてくる。テクノロジーの方向を全て理解してやってくる。3年、4年位先のものに飛びつく。それは米国の教育だと思う。米国では、小さい時からそういうショウ・アンド・テル、自分で資料を持って来て皆に喋るという訓練がされている。

マーケティングは重要で売れないとだめ

質問(大橋克己 クラレ社友):新しいマーケットのリーダーになるということをシリコンバレーでは行われている。モノが売れている中で、マーケティングの部分は必要だ。マーケットの方からみて、ビジネスの手法、やり方を知りたい。

回答:マーケティングは重要で、売れないとだめである。インド人、中国人が技術をやって、アメリカ人がマーケティングをやる。マーケティングVPには、白人が多い。モノを作らなくて、ソーシャルネットワーク関連のビジネスがいつまで続くのか疑問を持つ。

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セミナー参加者の感想

当財団の西河洋一理事長

先生は、ベンチャー投資家の立場で「99%がダメでも1つとれれば良い」と言うが、小生は経営者だから、どこの会社もつぶしてはならないと思い事業に取り組んでいる。
エンジェル投資家のノウハウと、事業家がコラボレーションできたら社会に役立てる強力なビジネスができるのではないかと思う。
先生の指導を受けながら、事業の創生に取り組んでいきたい。

富士通研究所の山中隆敏氏(工学博士)

事業を成功させるには、「個々の能力は必要だが、チームワークが重要であり、必要不可欠な条件」という新たな気づきが得られた。
日本に見られがちな「短期間での投資では、文化が育たないし、人材も育成できない」そのようなシリコンバレー文化の奥深さを今回の講義で得られた。
投資家の欧米と日本との違い、技術の目利き、事業立ち上げに向けたサポートの差を改めて感じた。

サンシン電気(http://sanshin-ele.com/) CTOの佐竹氏

大手半導体メーカー経営トップのご経験を経て、現在米国シリコンバレーを中心に投資活動を実践し、成果を上げられている平先生の講演を拝聴させていただく機会を得たこと、深くお礼申し上げます。
平先生は、御自分の体験と実績を交えながら、「技術のジレンマ」「先の技術を読みとる」「パートナー」「人のチームワーク」などの重要性を説いていただいたことは大変判りやすく、かつ刺激になりました。
私は本講演を通して、米国に負けない技術を今後とも自分自身が創出し、かつ米国に負けない、投資したくなるようなEQ、PQが高い若者たちをこの日本で育てることだと、心新たに想った次第です。

元リコー常務の坂巻氏

シリコンバレーの半導体企業に長年従事し、家電用の半導体から通信・デジタルネットワークの半導体へと技術革新の時流に乗ってご自身が勤務した大手半導体企業で、べンチャーの新しい半導体企業を育成してこられたご自身の体験をもとに独立し、エンジェル投資家としてシリコンバレーで実績をあげている平氏の講演は、大変有意義で参考になりました。
この種の講演では、成功体験話が多いなか、失敗された事例のお話を沢山してくださり、これが大変参考になりました。
エンジェル投資の成否を分ける要因はいろいろあると思いますが、平氏のご紹介で学んだことは、商品企画の適正度が非常に大切であるということでした。特にベンチャーに燃えている当事者たちは、自分のアイデアにほれ込んでおり、一種の熱病患者状態で、彼らのアイデアが本当に事業になるかどうかは、その製品が市場に受け入れられ、事業として経営できる水準までの販売台数が見込めるかどうかを正しく理解させることが重要であると感じました。

元クラレ常務の大橋氏

シリコンバレーの起業投資支援を様々な視点から教えて頂き起業投資の実態が分かり大変ありがたかった。特に米国では電子・通信分野へ集中投資がなされ、その核心は起業で一番重要な起業家を判断すること、起業家を支えるチームが機能していることなど外部では覗い知れないなど多くの収穫があった。

元日鉱金属常務執行役員(CTO)の柴田理事

ベンチャーの在り方、製品開発とマーケティングの心得等、氏の豊富な経験を基での興味深い講演であった。
ベンチャーは常に情熱を持ちスピードを持って行動する必要がある。ベンチャーキャピタル及びエンジェルの投資の日米の大きな差が披露され、日本における経済活性化としての起業支援の重要性が感じられた。
一方、氏の「日本人はベンチャーの意識がある。小さい頃聞かされ育った"桃太郎の話"は黍団子を資金として雉、猿、犬の戦略を使い相手を攻略し、莫大な利益を得るベンチャーの話である」の例には目から鱗であった。
ベンチャーとしてのスティーブ・ジョブス氏が常に先のことを考え行動していた話や、ベンチャーキャピタルとしては如何にリスクを考えベンチャーの情熱に投資するか等…興味深い話であった。

元防衛大学校教授の奥出阜義

(1)90%以上成功が見込めなくても、資金援助をする「人材育成」文化の深さ。日本の単年度、短期間見返り主義の援助では、戦略的人財は育成できない。

(2)日本人の人財育成への平氏のパワーの活用。今後も継続タイムリーに尽力いただければ幸い。

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技術経営人財育成セミナー