一般財団法人アーネスト育成財団

技術経営人財育成セミナー(第23回)変革期のリーダーが学ぶことは何か

免疫療法の時代

佐藤 一弘(さとう かずひろ)

日時 2018年1月16日(火)18:00~20:00 (講演60分、討議30分他)
場所 一般財団法人アーネスト育成財団事務所内 アクセスへ
参加費 3,000円(終了後の懇親会費用を含む)
定員 最大18名(定員になり次第締め切ります)
申込方法 FAX 03-6276-2424 または Eメールoffice@eufd.orgにて
主催 一般財団法人アーネスト育成財団

講演PDF(案内)(985KB)

免疫療法は、1960年にノーベル賞を受賞したバーネットにより提唱された免疫監視機能の概念に始まる。生体内には常にがん細胞が発生しており、そのがん細胞を免疫が排除しているため、通常は、がんに侵されることはない。しかし、一旦、このバランスが崩れ、がん細胞の増殖能力が免疫の排除能力を上回ると、がんに罹患してしまう。このがんを免疫の力で治療する免疫療法は、免疫学の発展を背景として、急速に進歩し、白血病の一種では、80%以上の効果を示すものが出来ている。
本講演では、免疫療法の進歩を概観し、技術の変化が激しい時期のおける創薬ベンチャーである株式会社リンフォテックの方向性等を伺い、革新的な新薬の顧客づくりに関するマーケティングについて、講師との質疑応答の中から技術経営を学ぼうと考えています。

【講師略歴】

佐藤 一弘(さとう かずひろ) 氏

<略歴>

1985年 東洋製罐株式会社入社
東洋製罐グループ綜合研究所勤務

2005年 芝浦工業大学大学院工学マネジメント
研究科修了

2007年 芝浦工業大学大学院工学研究科
後期博士課程修了

2010年 東洋製罐新規事業部長

2014年 東洋製罐グループホールディングス
ライフサイエンス事業推進室長

2016年 株式会社リンフォテック代表取締役社長

2017年 東洋製罐グループホールディングス執行役員

(株)リンフォテック
    代表取締役社長 博士(学術) 佐藤 一弘(さとう かずひろ)

『免疫療法の時代』

司会(小平和一朗専務理事):今日は、『免疫療法の時代』と題し、新しいガン治療薬の開発に取り組んでいるベンチャー企業の佐藤一弘社長に講演をお願いした。 佐藤社長は、私と同じ芝浦工業大学の工学マネージメント研究科の一期生で、博士課程で一緒だった。元は東洋製罐の研究所にいて、2年前に研究所を出て、(株)リンフォテック代表取締役社長になった。今年の4月には研究所所長として戻るということで、色々と活躍している。
今回お願いしたのは、癌の治療方法も変わってきていて、あまり副作用のない治療方法が 検証から実際に使用されているという段階で、実績を上げている。それが、どのようなものかを含めて講演をしていただく。また、特許の方でも専門家なので、いろいろなことを質問して頂けると良いと思う。大学は慶応大学の化学の出身である。

佐藤 一弘

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講演概要

講演内容詳細 (3.41MB)

自由診療である免疫療法に逆風が吹いている

講師(佐藤):ご紹介ありがとうございます。『免疫療法の時代』というテーマで話をする。
(株)リンフォテックは、免疫療法用のリンパ球を培養している会社である。
図1が、培養をしている雰囲気を撮ったものである。無塵衣を着て、クリーンルームというクリーンな環境で患者の細胞を培養し、その培養したものを検査する工程などがある。免疫療法は、日本は非常に強い分野である。
最近でもノーベル賞候補の京都大学の本庄先生や大阪大学の坂口先生は、去年の10月も、ノーベル賞がもらえるのではないかという騒ぎになっていた。元々、日本では北里柴三郎の破傷風の血清というところから始まっている。基礎は強いが、実際の応用になると他の国に先を越されてしまっていて、かなり厳しい状況になっているのが現状である。
日本では、特殊な環境もあり、国の承認がなくても、医者の権限で新しい薬は使える。自由診療というが、かなり悪徳な医者もいて、免疫療法をお金の道具に使い、評判を落としていることもあって、最近では新聞紙上で免疫療法などは行うなという風潮も流れていて自由診療である免疫療法に逆風が吹いている状況である。

図1

図1 細胞培養を検査する工程

1.1 自己紹介
簡単に自己紹介をする。先ほど紹介を頂いたように、東洋製罐に入社し、東洋製罐グループ綜合研究所というところに入った。
東洋製罐グループ綜合研究所は、横浜の三ツ沢というところにある。三ツ沢は桜の名所であり、研究所近くの三ツ沢公園の桜は、最近古い木が多くなって背が高くなった。下からでは余り咲いているように見えないが、上から見ると非常によく見えて、研究所が桜を見る一番のポイントになっている。

図2

図2 東洋製缶の業績・売上の推移

図2の東洋製罐の業績・売上を示している。私が入社した85年頃は右肩上がりで売上が伸び、バブル期には高度成長期に合わせて伸びている状況であった。この伸びたときの主力は、飲料用の缶である。自動販売機で、コーラやコーヒーを缶で飲むようになり、その需要で伸びてきた。後半になるとペットボトルが出てきた。ペットボトルがたくさん売れた。
私は東洋製罐グループ綜合研究所で、缶の材料、ラミネートしているペットフィルムの材料開発、缶の中に塗っている塗料の開発、缶胴の横を接着する接着剤の開発などを行ってきた。1994年頃は、バブルの絶頂期であるが、売り上げが8,000億円ぐらいに到達した。その後、バブルの崩壊があり7,000億円から8,000億円の間で推移している状況である。利益率をみると1990年が高い利益率であったが、どんどん落ち、現在は営業利益でも2~4%である。最近の新聞の株価のところを見るとPBR(株価純資産倍率)が0.5倍~0.6倍になっている。このように業績が伸びないので、新たな事業をやって行かなければならないということで研究所がその使命を担い、スマートフォンのカバーのフィルムの上に塗っている抗菌材、遺伝子検査用のキットの開発、細胞培養用のバッグなどを開発してきた。

ある程度仕事ができるようになり、研究開発のマネージメントを勉強しようと2003年頃芝浦工業大学のMOTに行った。そして、新規事業部への転勤となり、本社で事業化に取り組み、細胞培養用のバッグを実用化するのに、(株)リンフォテックを買収し、自分で(株)リンフォテックに乗り込んで、社長をやっている。

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1.2 (株)リンフォテックの紹介
簡単に(株)リンフォテックの紹介をする。場所は、江東区冬木というところで、近くの駅は門前仲町である。ここの株式は、東洋製罐ホールディングスが70%、会長が10%ぐらい持っている。事業内容は、活性化自己リンパ球の受託培養、海外への技術導出、培養で使う培地、凍結保存液などを販売している。
図3が簡単な事業ビジョンであるが、細胞加工技術を中心に、付随したものを全体的にビジネスとしてやっている。大きなところは、細部加工というもので、患者様のリンパ球を培養することとか 新たな培地とか、新たなiPS細胞関連の技術開発もやっている。
完成した技術を、主にアジアであるが韓国、中国、台湾などに技術導出し、それに付随するものを輸出するというビジネスモデルでやっている。細胞培養試薬なども開発している。

図3

図3 (株)リンフォテックスの事業ビジョン

培地や細胞は、ペットボトルとかバッグに入れている。細胞保存液は細胞を -80℃で長期保存するケースが多いが、何もせずに保存すると細胞内の水分が凍って体積が膨張するため細胞が壊れてしまう。それを防ぐための細胞保存液という試薬を売っている。iPS細胞などの研究用の細胞は、凍結保存することが多いので、これから伸びていくのではないかと期待している。
先ほどいったように、韓国や中国そして台湾などに技術協力をし、それに伴って培地を売るというビジネスが今は一番多くなっている。
韓国では、食品医薬品局(FDA)の認可が下り、薬として承認されている。
中国では、現在、臨床試験をやっている。台湾では、今年から治験に入るというところである。

図4

図4 リンパ球培養用試薬・機器

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1.3 免疫療法
ここからが本題であるが、免疫療法というと、患者さんの血液を取り、培養し増やして活性化させて戻すというように単純な話ではあるが、なぜそういうことができるようになったかということを紐解くために ノーベル賞の免疫関係の受賞歴を図5に示す。

図5

図5 ノーベル賞の受賞歴

最初の頃は、血清とかが発見されたりして、そのメカニズムを探るために、いろんな抗体とか、免疫の源になる細胞とかの発見が多くあった。そういうところでワクチン等が、実用化されてくる。なぜ外部から入って来る細菌や癌などに効くのかということが色々分かってきた。
解明には、遺伝子の技術やタンパクを解析する技術や、免疫の主役である抗体などを人工で作る技術、さらに抗体などを遺伝子組み換えで作れるようになり、今では、免疫療法というが出来てきた。

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(1)免疫監視機構
特に注目されるのが、ノーベル賞学者バーネット博士が免疫監視機構というのを提唱した。
免疫監視機構とは、人間には常に癌細胞が大体5,000個とか数千個のオーダーで毎日発生しているらしいが、免疫系がその監視を行い、癌が発生するとその都度免疫は癌細胞を殺すというものである。通常は癌にはならないが、免疫と癌の力関係が崩れると癌になるといわれている。1970年からいわれていたのだが、最近になって免疫療法というのができるようになってきた。
免疫でも、いろいろな移植をすると、自分の免疫で移植したものを壊してしまうことがあり、免疫抑制剤が出てきた。また、癌を攻撃する主役のT細胞が発見されたり、自然免疫とか獲得免疫とか、そういう基本的なことが分かって来た。
免疫というのは白血球、人の血液を遠心分離すると、上澄みと、下澄みの赤い層ができるが、その間に白血球の層ができる。その白血球の層には、リンパ球とかマクロファージとか、樹状細胞がある。これらも日本人が発見に貢献したものである。リンパ球が免疫の主役になってくるのが、NK細胞とか、T細胞というものである。

(2)T細胞の役割
T細胞には、癌を攻撃するキラーT細胞、癌の働きを抑制するT細胞とか、司令塔であるヘルパーTとかいうのがある。これらがどういう風に癌を攻撃しているのかを簡単に説明をする。
癌細胞は、マクロファージとか、いろんなものに食べられると、特定のものを吐き出す。それが癌攻撃の目印になる。その外に出したものが癌抗原という。その抗原を目印に癌を攻撃する。その攻撃には、樹状細胞が攻撃の指示を行う役割を示している。樹状細胞が、ヘルパーT細胞に指示し、ヘルパーT細胞が、キラーT細胞を活性化させて、ガンを攻撃するということである。
癌を攻撃するところをもう少し詳細に説明すると、癌から癌抗原というのが出ている。樹状細胞がこれを取り込む。樹状細胞から出たMHCとT細胞が情報交換をして、T細胞が癌を攻撃するようになる。一方、T細胞が攻撃力を高めるためには、T細胞が樹状細胞から信号を入れることにより、反応が起こり活性化する。これが特定の癌に行くと、癌を死滅させるようなタンパク質を出して癌は死滅していくことになっている。
(株)リンフォテックでは、ヘルパーTとキラーTを患者様の血液からを取り出し培養するということを行っている。患者様の血液の中には、癌の抗原をとり込んだものが入っていて、癌を攻撃するような細胞があるので、それを増やして活性化させてから患者様に戻し癌を攻撃して、癌を抑制していこうという考えである。

(3)二酸化炭素の透過性のあるバックを使って培養する
患者様から血液を採取してきて、リンパ球を分離し培養するが、培地に入れるだけでは増えないので、ある刺激を与えなくてはいけない。この刺激を与えるための抗体が10年ぐらい前に人工で作れるようになった。
抗体で刺激を与えることで、増やせるようになった。フラスコで刺激を与えると、その後増殖するのでバッグに入れて、大量の培地を入れ増やしていく。この時に東洋製罐の技術が寄与している。細胞というのは呼吸している。そうすると二酸化炭素を排出し酸性になり増えなくなってしまう。そこで、二酸化炭素を排出するような気体の透過性のあるバックを使って増やすことを行う。これを、製剤化して患者様に戻すというようなことやっている。

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図6

図6 培養と投与

図7は、先ほどの活性化されたものなどが増え、活性化をさせて培養すると癌を殺す細胞ができているということを確認するために取ったデータである。

図7

図7 培養の分布

(4)グリオブラストーマとメモリーT細胞を一緒に入れると癌細胞が死ぬ
もう少し詳しく見ると、エフェクターメモリーとかセントラルメモリーというものを(株)リンフォテックでは作っている。癌に対する攻撃性が高いものというのは、攻撃性が高いほど体内ですぐに死んでしまうが、メモリーというのは、体内に入って数週間生きていて、癌に対して非常に効果的だといわれている。
試験管でグリオブラストーマと培養したメモリーT 細胞を一緒に入れておいておくと、癌細胞がどんどん死んでいく。一方、細胞培養だけの時には、癌細胞がどんどん増えていくということが試験管的には分かった(図8を参照)。

図8

図8 腫瘍細胞とメモリーT細胞を共培養の経時変化

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(5)活性化リンパ球の投与
実際に人に対しての効果はどうなのかということで、10年前に肝臓癌の術後の再発予防ということで試験をした結果を図9に示す。癌は、全体的に58%ぐらいの生存率ということであるが、癌種によって大きく違う。
膵臓癌は、見つかった時にはかなり進行しているということで、治すのが非常に難しい。また、肝臓癌も直すのが難しい癌で、手術をしてもすぐに再発するので非常に生存率が低い。肝臓がんを手術で取った人で、リンパ球を投与した人と投与しなかった人で再発し、亡くなる率と再発せず生存している率を示したものである。活性化リンパ球を投与することで、投与しない人に比べ、2割ぐらい多く再発せずに健康に生きているということが分った。
上のグラフが日本の結果で、下のグラフが韓国の結果である。韓国では治験をして食品医薬品局(FDA)に認められて薬になっている。
現在、肝臓癌などには効果的な抗癌剤がないが、活性化リンパ球を投与することにより、再発を防止するという効果があったということになっている。

図9

図9 肝細胞がんの術後の再発予防効果

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(6)脳の癌、グリオブラストーマ
グリオブラストーマというのは、脳の癌で、悪性腫瘍で一番悪いものである。これは発見されると、平均的な寿命は12ヶ月という。1年は持たないというケースも多い。活性化自己リンパ球を投与すると、数年~12年で生存するということで、非常にグリオブラストーマとか難しいところに対しても効果があったということがわかった。特にクリオブラストーマも、効果的な薬がないので、(株)リンフォテックとしては治験をして薬として認可を取って行こうと考えている。

図10

図10 グリオブラストーマへの治療効果

しかし、効果があっても、生存率でみて30%とか40%ということで、半分以上の方は効かない。全く効かないという人もあり、どうして効かないのかという疑問が出てくるが、最近徐々に原因が分かってきている。
癌に対してT細胞が活性化すると、T細胞の活性化を止めるスイッチみたいのがあり、癌がT細胞の活性化を止めるスイッチを押す。そうすると、このT細胞は活性化せずに癌を攻撃しないということが分って来た。このT細胞の活性化を抑制するスイッチの1つがCTLA4というタンパクである。このCTLA4の働きを抑制するヤーポイという薬ができた。

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(7)オプジーボ、進行性の末期の癌でも20~30%で効果がある
最近、一番有名なのは、オプジーボというものであり、新聞紙上に大きく取り上げられていて、1年投与すると3,500万円かかるという高額医療批判で一番の急先鋒ということで掲載されていた。京大の本庶佑(ほんじょ たすく)先生が作ったものである。T細胞が癌細胞を攻撃しようとすると、がん細胞はPD-1の受容体であるPD-L1を発現してPD-1と結合し、T細胞の活性化を抑制する。オプジーボは、PD-1とPD-L1との結合を阻害し、T細胞への活性化を行わせる。進行性の末期の癌でも20~30%で効果があるということで、画期的な薬として承認された。
これは、最初はメラノーマという皮膚がんで承認されたが、メラノーマは希少疾患で患者が少なく、コストを計算して設定したのが3,500万円だった。患者数が多い癌に使えば、コストは下がってきている筈なのだが、日本の医療制度の悪いところで、高額のままで患者数が多い癌に適用されている。そのため、政府は半額、また半額と下げてきている。

(8)抗がん剤CAR-T
最近、もう一つ画期的なCAR-Tという抗がん剤が出てきた。これは、人工的に遺伝子を入れ替えたT細胞であり、強力に癌を攻撃するようにしたものである。白血病の抗原を攻撃するように特異的に作ったものである。急性白血病の90%以上に効果があり、完全寛解に持って行けるということで、アメリカでは既に承認された。日本でも間もなく承認される見込みである。
問題は1回の投与で、5千数百万円がかかるということである。日本の厚労省が、どのような認定をするのかということが注目されている。特定の癌を狙って、強力に攻撃するのだが、標的とする見印のようなものがでている正常な細胞も殺してしまい、白血球が無くなってしまうという副作用が出る。そのため、白血球増やす薬を打ち続けないと副作用を抑えられないということがある。
自分の親戚や知人が癌になっていて、CAR-T細胞療法なら治るということだとすると、5,000万円を出せるかというのが大きな問題かと思う。
親が癌になった時に、治せる方法は知っているのにお金がなくて直せないというのは苦しいことかなと思う。日本では15歳などの若い人には保険が適用になるが、高齢の方は適用にならないという考えが出ているようである。また、治ったら代金を払うが、効かなかった場合はお金を取らないということを、ノバルティスという医療品会社では成果的な診療報酬ということで現在提案をしている。
CAR-Tの治験では、ノバルティスが先行していて、日本ではタカラバイオというところがやっているが、この分野、臨床的に日本はかなり遅れている。

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図16

図11 再生医療の体制

日本の認可体制は、再生医療に対して非常に優れたものになってきて、世界で一番進んでいる制度になったといわれている。CAR-Tなどは同じスタートだったら日本の方が早く認可されたのではないかいわれている。3年位前から(株)リンフォテックなど培養企業で細胞培養ができるようになった。それまでは病院の先生の管理下のもとで培養をやらなければなかった。 こういうところの法整備が行われ、薬事法が改正されて再生医療というものが定義され、それが認められ易くなったということがある。
また、医療制度の体制として、臨床研究、治験そして承認するというのは、長いものでは10年位かかっていた。しかし、早期承認制度という、治験を行ってある程度安全性が分ったら販売が認められ、販売しながらデータを集め、有効性を証明するというような形になって来た。ベンチャーなどが、かなりやりやすくなってきた。先ほどのグリオブラストーマだと5億円位で出来るではないかという試算が出ている。

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質疑応答

医者の数は十分なのか

質問(加地照子):この免疫療法については、専門の医者、かなりレベルの高い医者が必要かと思うが、日本では、その医者の数は十分なのか、また人材育成のレベルというのは十分いっているのか。

回答(佐藤一弘講師):免疫療法のところでは、人材が少ない。構造的に、今は保険診療になっていないので、保険診療でない診療を行う先生は非常に少ない。大阪大学、京都大学はじめ、基礎をやっている先生はいるが、免疫療法を理解して、臨床をやられる先生がまだまだ少ない。そこら辺は、問題であると思っている。
アメリカなどでは、臨床をやる先生が多く、進んでいる。いつまでたっても、日本は基礎ということで、基礎は強いが、実際のビジネスでは負けているという状況になりつつある。ノーベル賞とか、そういう人は出るが臨床になると極端に弱くなってしまう。

質問(小平):免疫療法というのは、人間が持つ免疫性の働きを体外で行っているということか。

回答(佐藤講師):そうだ。自分のリンパ球を外に出して、攻撃性を増して体内に戻すということで、自分の免疫力で自分の病気を克服するということである。QOL(Quality of Life)というが、生活の質を落とすことがないというところが、一番特徴的なところである。抗癌剤を投与されると身体への負担がきつく、歩いて病院に行き治療を受けたのだが、病院を出るときは車椅子だったり担架だったりということを時々聞く。それだけ抗癌剤というのは、命は長らえるが生活の質を落とすというところが大きな問題で、免疫療法では、生活の質を落とすことがないとか、抗癌剤と併用すると抗癌剤を減らすことができる。そうすると副作用が抑えられて楽になるということをよく聞く。患者様の中には、抗癌剤をやっていたが、免疫療法に切り替えて、ゴルフができるようになった等のメールをいただいたり、手紙をいただいたりすることがある。

米国で5千万円以上と滞在費

質問(辻恭子):CAR-Tの治療などは、紹介がなくても一般の市民が、少ない費用で治療を受けるのか。

回答(佐藤講師):日本ではまだ無理だと思う。日本では治験の段階なので、治験に参加できれば治療を受けることができると思う。治験に参加できる患者様は、他の病気を持っていない患者である等と特定されている。それは、効果の数値が取れて効果性が確認できる必要があるからである。アメリカに行けば受けることはできるが、5千万円以上と滞在費用がかかってしまう。

回答(淺野昌宏理事):東洋製罐が、(株)リンフォテックをM&Aをしたのは容器の可能性が主なのか、医療分野などへの進出というもの考えられたのか。

回答(佐藤講師):基本的には容器が主である。今までは食品や飲料の容器であったが、医療分野の方にも広げたいというのが主である。余り自分たちが直接医療をやるということまでは考えていなかった。

質問(大塚忠 大塚特許事務所代表):試験用の容器とか沢山の種類があるが、容器は使い捨てで消耗品なのでビジネスとしては良い分野なのではないか。

回答(佐藤講師):ペットボトルでいえば、東洋製罐が入る前は、サーモフィッシャという1社供給だった。500ccで400~500円だった。東洋製罐では、飲料用に数十円で販売しているので、大幅なコストダウンをしたのでかなり売れた。サーモフィッシャは容器の専門メーカではないので、倒したりすると漏れるということがあった。その点、密封性ということであれば、東洋製罐は一日の長があり、いかに液を漏れないよう締めておくかということは得意なところである。

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技術経営人財育成セミナー

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