技術経営人財育成セミナー(第22回)変革期のリーダーが学ぶことは何か

スマートインフラビジネスのグローバル展開

藤井 享(ふじい とおる)

日時 2017年9月26日(火) 18:30~20:00 (講演60分、討議30分他)
場所 一般財団法人アーネスト育成財団事務所内 アクセスへ
参加費 3,000円(終了後の懇親会費用を含む)
定員 最大18名(定員になり次第締め切ります)
申込方法 FAX 03-6276-2424 または Eメールoffice@eufd.orgにて
主催 一般財団法人アーネスト育成財団

講演PDF(案内)(941KB)

わが国製造業の競争軸は、従来の製品競争力からサービス競争力へとシフトしている。このような背景において、総合電機メーカーの製品技術の脱コモディティ化に向けた戦略として、既存サービスの高付加価値化、及び製品とサービスのパッケージ化による社会イノベーション事業(スマートインフラビジネス)でのサービス事業化の成功が利益創出の鍵となっている。本講演では、取引費用理論、資源ベース理論に基づく顧客視点によるサービス導入に向けた理論的な枠組み(サービスイノベーションによる利益創出モデル)を提示して、グローバル市場に向けたサービス事業戦略について各種事例と共に紹介する。さらに、同モデルを使用して様々な企業において、どのようにサービス事業化を進めていくできかの課題点について議論を行なう。

【講師略歴】

藤井 享(ふじい とおる) 氏

1990年法政大学社会学部卒業、同年、㈱日立製作所入社、大手製造業者向営業・営業企画、CS推進、営業教育部門等を歴任し現在に至る。
2012年中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了・博士(学術)。
2013年国立大学法人群馬大学研究・産学連携推進機構・客員教授(~2015年)。
<現職>㈱日立製作所産業・流通ビジネスユニット営業企画本部部長代理、尚美学園大学大学院総合政策研究科客員教授、公立大学法人横浜市立大学大学院国際マネジメント研究科兼任講師。

一般社団法人日本開発工学会理事、横幹連合産学連携委員、明治大学サービス創新研究所客員研究員、中央大学政策文化総合研究所客員研究員他。

(株)日立製作所 産業・流通ビジネスユニット
      営業企画本部 部長代理 藤井 享(ふじい とおる)

『スマートインフラビジネスのグローバル展開』

司会(小平和一朗専務理事):『スマートインフラビジネスのグローバル展開』という題で、日立製作所の産業・流通ビジネスユニット営業企画本部 藤井 享博士(学術)においで頂いている。藤井氏の略歴は、中央大学大学院総合政策研究科修了・博士(学術)を経て、現在日立製作所の産業・流通ビジネスユニット営業企画本部の部長代理であるとともに、尚美学園大学大学院総合政策研究科客員教授として『競争戦略論』の講座を、横浜市立大学大学院国際マネメント研究科の兼任講師で『サービス起業論』の講座を、その他学会の理事等に就任している。
日立では、アジアとか世界中のグローバル市場を対象に、営業企画の部門で仕事作りをしている。
日立でのスマートインフラビジネスを一つの主題とし、グローバル展開をどのようにされているかという話を今日は講演していただく。

藤井 享

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講演概要

講演内容詳細 (1.62MB)

社会インフラでの4つのサービス サービスイノベーションによる利益創出モデル

講師(藤井):図1が今日の発表する中心命題になる部分で、サービスイノベーションによる利益創出モデルである。
私の博士論文のテーマは、『サービスイノベーションによる利益創出の分類の枠組み』というタイトルである。サブタイトルは『総合電機メーカの社会産業インフラシステムの事例から』ということで、そのスコープで見たときに、こういう利益モデルということがいえるのではないかというのが私のテーマであった。

横軸には、資産の連携価値
モデルは、単純な図であるが、横軸には、資産の連携価値がある。資産の連携価値とは、モノの連携価値である。単体なのか、システムなのかで分けている。システムというと曖昧であるが、総合電機メーカはいろいろな事業がまたがっているので、いろいろな事業とかグループ会社の製品を抱き合わせて売ったりする。そのような総合エンジニアリングをやる事業が、第4象限であり、第3象限は、製品を単体で納める事業である。

縦軸は、資産の所有権
縦軸は、資産の所有権で、資産の所有をお客様に売り切るモデルと、業者とか第3者が所有し、お客様にその製品から得られる解、「コトづくり」と言われているが、そのようなものを提供するというモデルがあり、社会事業インフラにおいては、4つのサービスがある、というのがこのモデルである。

図1

図1 サービスイノベーションによる利益創出モデル

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製品+サービス(第3象限)
第3象限は、製品単体をお客様に買って頂いて、お客様の資産になったものを外からサービスするモデルである。例えば、エレベータをお客様が買い、お客様の資産になった。それを日立ビルシステムというサービス会社が、月々の保守契約とか部品供給とかを外からやっていくというサービスである。

エンジニアリングサービス(第4象限)
第4象限のエンジニアリングサービスは、エンジニアリングメーカの日揮、テック、千代田などがやっている事業を、東芝、三菱電機、日立とかがやっている。自分たちでいろいろなものを作っているが、いろいろなものを一括で納めるときに、例えば石油化学コンビナートに収めるときに、工事とか保守メンテなどをパッケージにして、お客様に売り切るモデルである。これが20世紀に行われていたエンジニアリングサービスのモデルである。総合電機メーカは単体で勝負をすると値段が高くなってしまうので、総合エンジニアリングで比較的お金を持っているお客様に、まとまったシステムを売っていこうというものである。これがまさに20世紀のビジネスだった。図1の右側が資産の連携価値である。日立は、総合電機メーカなので、いろんなものを作っている。バブル期にいろいろな会社がリゾート開発をやっていた。東鳩(キャラメルコーン)がゴルフの建設をやっていて、千葉にゴルフ場を建てるということで担当をした。ゴルフ場に電機業界として納入できる製品はいろいろある。それが、第4象限のエンジニアリングサービスである。

ソリューションサービス(第2象限)
2000年になって、単体で製品を納めても、利益があまり出てこなくなった。そんな中で出てきたのが、例えば製品単体で、その単体をお客様が持つことによって得られる解のみを提供しようとして出てきたのが、第3象限のソリューションサービスである。例えば、エレベータの所有を日立や東芝とかの会社もしくはグループ会社が保有して、エレベータの使用量を毎月貰うというモデルである。その時に、新しいエレベータになると、電気代が安くなったりすると、そこから得られた分をお客様と分けたりすることができるモデルである。

BTOサービス(第1象限)
第1象限はBTO(Business transformation Outsourcing service)サービスというが、お客様の事業全体をアウトソーシングしてもらおうという事業である。これはIBMが始めた事業である。ポストイットの3M社の総務部門や情報システム部門、これを社員ごとIBMに引っ張ってきて、そういった機能を総務ビジネスとかITのビジネスをIBMが、全部機能として提供したというのがBTOサービスである。
3Mは化学メーカなので、化学メーカの総務事業やIT事業のノウハウを蓄積して、ここで新しいビジネスを立ち上げて行った、というのがIBMのビジネスモデルである。
我々電機メーカが取り巻く、製造業のサービス事業化というのは、このようなモデルで合っていると言えるのではないかということで、このモデルでいろいろなことを検証してきた。

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事例:環境都市開発(スマートシティ・スマートコミュニティ)
スマートシティ、スマートコミュニティは、ずいぶん経つので、周知のことであるが、従来、電力会社が火力発電、原子力、水力とかこういう格好で供給していたものを、風力とか太陽光とかで作った電気を蓄電池バッテリーに貯めてみたり、まさに今、IT、IoT であるので、データセンターとかが沢山出てきたりとか、いろいろな所で電気がぐるぐる回る様になるということで、このスマートグリッドを強化しなければならないというのがスマートシティだといっている。
そんな中で、どこの象限で攻めていくかということをまとめたのが、図2の右側である。
例えば、製品+サービスといったところで勝負して強いのは、パナソニック、大崎電機、GSユアサなど機器専門メーカである。このようなところで、我々がバッテリーで勝負をしても絶対お金でかなわないし勝てない。
では、どこでやるのかというと、エンジニアリングサービスということで、地域まるごとで持ってくるところを攻めなければいけないというのが、東芝や日立が狙っている事業体である。
それに対して、IBM などは、他社の領域を侵さずに黒子に徹する事業を行うということで、物を売るのではなく、徹底的にソリューションを売るというのがIBMの戦略である。
図2は、当時スマートシティ、スマートコミュニティが活況だった2011年頃にまとめたものであるが、大体こういう恰好で攻めている領域が分けられるかということで、分けたのが図2の右側になっている。

図2

図2 スマートシティ・スマートコミュニティ

結論(まとめ)
スマートインフラ事業ということで、今日はグローバル化に向けた話をしたが、我々総合電機メーカは、従来のエンジニアリングサービスで、きちんとしたサービスを含めたパッケージを作り、ここでメリハリの事業を作るということである。ただ、ここの事業というのは、お客さんが儲かっていて、一社に注文をくれるお客様がいるときは良かったが、今は、そのようなお客様はいない。
そうなって、何が大事かというと、いわゆる事業運営会社を作り、サービスモデルを作り、いろいろな出資者を募って進めていくというモデル作りが大切だというのが今日の話の結論になる。

図3

図3 結論(まとめ)

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今後の課題
今後の課題であるが、Z軸に市場の成熟度とか 、営業利益率などを入れると、もっと面白くなるかと思っている。まだ着手できていないがこういった課題を上げている。

図4

図4 市場成熟度と営業利益率の関係性

スマートインフラビジネスにおける留意点
スマートインフラビジネスにおける留意点ということで、8つ並べた。
これのポイントを説明すると、何といっても、パッケージ型のサービスインフラ戦略ということで、エンジニアリングの仕方が変わってきている。
どうやってビジネスモデルを作るかということを考える必要があって、よく学生の前で話すが、私は文系であるが、先ほどのモデルは、理系の人ではなく文系の人が作っている。文系の経営学とか、MOTとかやっている人がモデルを作っていて、そういうモデルが作れるが故に大きなシステムが売れて、それが故に会社が利益を出しているということがいえるので、まさにこういったパッケージ、サービスパッケージを作ってくれる人材、私はサービスビジネスクリエーターと言っているが、こういうクリエーターがこれから必要になってくる。
そんな中で、私たちは。モノづくりの業界なので、あまり金融とかファイナンスとかに長けている人がいないが、そういうことに長けている人と組んで金融サービス業、こういうとこに入っていって、こういうところから得られる利益は莫大であるということを意識しなければならないというところである。
3番以降は、当たり前のことであり、ものづくりの基本的な話である。主に サービスパッケージを作れる人材を作って行かなきゃいけないというのが大きな課題になっている。

スマートインフラビジネスにおける留意点

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質疑応答

質問(前田光幸研評議員):4つの象限の図で、普通のメーカが左の第3象限にいて、ファイナンス力をつけると第3象限から第2象限に行けるということですか。

回答(藤井講師):そうである。

質問(前田):第1象限のBTOは、ファイナンスとかエンジニアリングサービスだけでもなかなか難しくて、運営をしなければならないので、相当いろんな運営者としての経験なり、ネットワークなりがいると思う。恐らく英国でも相当苦労されたと思う。その場合、ファイナンスとかエンジニアリング以外に何が必要かというのが一つ。このモデルそのものは、非常に良いと思っているが、これとスマートインフラ、要するに通信技術とかセンサー技術とかそういうものを込みこみで契約するのか。

回答(藤井講師):1点目の話は、まさにビジネスをどう作るかという話と捉えていて、仮説を立てて、いろんなことをやっている。こういう大規模プロジェクトは、いろんな要素があって、たまたま訪問先で話が聞けて、その先が見えて来たという話もある。
大事なのはいろんなところに人脈を持っているということだ。仕掛けているのは、営業である。営業がいろんなところに行って、お客様だけではなく、いろいろな所から情報を得て、それを社内に伝え、話が段々盛り上がってきているというようなところで、後は盛り上がった時にちゃんと先導していける能力が大事だと思う。
この大型の案件で話をしたが、全体の売上比率からしたら、大したことはない。イギリスの新幹線は別として、他のものは、100億円、200億円というものはそんなにあるわけではないが、いろいろな人ともコネクションを持ち、学会も一つであるが、自分のいる業界以外のところからも情報も取れるような、そういう人脈がやはり大事かと思う。

質問(角顧問):この第三象限で、製品+サービスとあるが、ここのサービス部門の見積単位としてどういう形でお客にオファーをして、日立としては、そのサービス部門で何をギャランティーするのか。

回答(藤井講師):一番分かりやすいことで説明すると、エレベータ、エスカレータ事業である。もともと日立製作所の都市開発グループという一つのカンパニーにあったが、2~3年前に日立ビルシステムという子会社に移った。利益率が1%程度である。だが、日立ビルシステムは、保守サービスをやっていて、そちらは利益が大きく、そこと一緒に事業をやっていかないと単体では売れない状況である。

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質問(杉本理事):1つは、図1の右の上(第1象限)に行けば行くほど、モノから人に依存することが多い。SPCなども、結局運用サービスをしているのは人なので、従来の日立が持っている人材じゃ賄えない。だから、SPC なども、例えば現地の会社を買ったりしなければならないと思う。
2番目は、今は日立のモノ、持っているハードウェアを中心にやられていると思うが、今後の展開によっては、ハードウェアを買ってきてでも、という方向に行かれるのかどうか、日本の企業はそこら辺はなかなか難しいと直感的には思うが、どうか。

回答(藤井講師):1点目の事業運営する会社をどう作ってかというのは3つあると思う。一つは、自分の会社もしくはグループ会社がやるケース。2つ目は買収してくるというケース。もう一つはSPC まさに出資者を募って、新しい会社をみんなで作りましょうというのがあって、その時の状況によってすべて違う。
例えば、南相馬で東芝が行った自分のグループ会社で、発電事業者を現地に置いてやるというのは、明確に東芝にとってのメリットがあるというので、やっているのだと思う。
それは、やはり出資する母体がどれだけ、出資するものにメリットを感じるかということであり、3つの形態が各々考えられるということかと思う。
2点目は、常に私たちは悩んでいて、自分たちが持っているものをベースにサービスをするか。それとも買ってきてでもやるか。このことはその都度その都度悩んでいる。
内販というのがあるが、社内で買うと高い。範囲の不経済といわれるが、社内で日本製を買うよりも、外から外向製を買ってきた方が安いということがある。
例えば建機のモーターとかは、日立工場が作ったモーターよりも、中国聖のモーターの方が安く、それを使うようなケースもある。それは考え方によって、他社のものを入れるケースもあって、そもそも電機メーカといって、一つの完成品があると、純正で日立なり東芝が全部やっているということがなく、日立の中に東芝の部品が入っていたり、その逆もあったりというケースもあるので、一概には言えない。
ただ一番大きな問題としては、我々製造業で、工場があるので、工場のモノが売れないと会社が成り立っていかない、それはモノづくりの会社であるがゆえに、自社製品を売らなければいけない。だから高くても自社製品を売っていく。自社製品をベースにしたサービスを作らなければいけないというのが第一にある。

質問(牛坂光 イーレックス株式会社営業企画課 課長):BTOサービスの、更に次のステップみたいのは描かれているのか。

回答(藤井講師):BTOサービスの次というより、いろんな種類がある。お客様の事業の何かをすべて請けてやるということかと思う。これは、今後の電機業界のフレームワークで見ているが、電機業界だけではなく、いろいろな業界でもいえると思う。その中で 。BTOの部分という所に、これからのサービスの極意があって、ここにいろいろな会社がどう入っていけるかということだと思う。次のモデルというよりも、BTO のサービスを、いま日立がやっているのは、「お客様と協創して新しい事業を作りましょう」「客様の先の事業を作りましょう」とやっているのが現状である。

質問(越智NTTファシリティーズ):現場にいて感じるのは、第1象限の方にいくべきと思うが、お客様によって使い分けをするのが良い気がした。お客様がそういう戦略部隊、例えば設備管理といっても、そこがしっかりやっているところと、丸投げで全部任してもらえるところの2種類がある。第1象限に行くには、自社だけのサービスだけでは駄目だと痛感している。

回答(藤井講師):お客様の色々な状況がある中で、ビジネス一括で業者に投げるのか、自分のところで取りまとめるかは、この調整費用が高いか安いかで決まるというモデルになっている。

司会(小平専務理事):その他ご質問があればお願いします。
今日は講演をありがとうございました。

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