技術経営人財育成セミナー(第8回)変革期のリーダーが学ぶことは何か

技術・経営・デザインのベストミックス

- 新事業創出ケーススタディ:ウォシュレット -

吉久保誠一(よしくぼ・せいいち) (芝浦工業大学総合研究所客員教授、元TOTO専務取締役)

日時 2013年11月26日(火) 17:00~19:00 (講演60分、討議30分他)
場所 一般財団法人アーネスト育成財団事務所内 アクセスへ
参加費 3,000円(終了後の懇親会費用を含む)
定員 最大18名(定員になり次第締め切ります)
申込方法 FAX 03-6276-2424 または Eメールoffice@eufd.orgにて
主催 一般財団法人アーネスト育成財団

パンフレット(74KB)

一般に優秀な人材を集め、新商品開発を短縮し、知的財産を守って事業運営をすることが、成功のプロセスといわれている。しかしながら、新商品のTime to Marketが短縮されると同時に、国際競争のもとでの新技術開発が生き残りの条件になっている現在、従来の考え方をベースとしたビジネスモデルが効果的プロセスでなくなりつつある。国内におけるビジネスを見ると、一般に企業は自社の持つ技術、ノウハウを中心に新商品を開発、売り上げの増加と利益確保を狙うプロセスが一般的である。また、製造業の持つ技術は垂直的思考が基本であり、水平展開は同一企業といえどもスムーズに実施されないのが実情である。
最近、企業はグローバルなビジネス競合に勝つため、商品自体を消費者の要求に合わせる事が必要である。そのため、より幅広い技術開発が求められている。しかし、限られた経営資源を効率的且つ効果的に投入するためには適切なテーマ設定がきわめて重要である。適切なテーマ設定は、ビジネスの発展、新事業の創出に密接に関係している。良質なテーマは良好なビジネスを約束する。
事例として"0"より大型ビジネスとして成長させた"ウォッシュレット"を取り上げ、研究開発よりビジネスまでのステップを分析し、具体的な情報収集、テーマ設定から事業推進までのプロセスを明らかにして新ビジネスの創出の参考としたい。

【講師略歴】

吉久保 誠一(ヨシクボ・セイイチ)氏

1964 芝浦工業大学機械工学科卒、TOTO入社
1990 取締役商品企画本部長
1997 常務取締役研究、技術、新事業担当
2000 専務取締役事業、デザイン担当
現在、博士(学術)、芝浦工業大学総合研究所客員教授 、岩手大学客員教授、TOTO技術顧問、
森村商事顧問

芝浦工業大学総合研究所客員教授、元TOTO専務取締役 吉久保 誠一

『技術・経営・デザインのベストミックス
     -新事業創出ケーススタディ:ウォシュレット- 』

ビジネスとして成功するにはテーマ設定が大切である

今日は『技術・経営・デザインのベストミックス』とあるが、主としてビジネスとして成功するのはテーマ設定が大切である。そのテーマ設定で成功した「ウォッシュレット」ビジネスをケーススタディにして、成功、失敗について今日は紹介したい。
新しい技術をビジネスにつなげなければならない。また新しいビジネスの発展の後ろには新しい技術が存在しているということは当然である。企業や大学でやっている研究テーマをビジネスにするのは難しく、成功する例は多くないとみて良いと思う。経営という立場で技術を取り込んでビジネスにしなければならないが、それに「デザイン」を経営のツールに加えると経営のデシジョンが早くなり、ベクトルを合わせるのに具合が良いので、このデザインについて今研究をしている。
本日はビジネスを進めるときにテーマ設定が重要で、これを間違うと結果が出ないばかりでなく経営資源の有効利用の失敗につながることから、ここをポイントに話を進めたい。

セミナー写真

「 デザインを経営のツールに加えると経営のデシジョンが早くなり、
ベクトルを合わせるのに具合が良い」と語る吉久保誠一講師。

講演概要

講演内容詳細 (1.32MB)

■ビジネスで成功するための要件

機械工学専攻の技術者から見たビジネスで成功するための要件は3つであると考えている。

(1)良いテーマ

一つは良いテーマを見つけなければならない。悪いテーマに取り組むことはビジネスにおける罪悪である。そこに人、物、資金を投入することは経営上不可である。しかしそれが多い。それをいかに避けるかである。

(2)良い仲間

次に良い仲間である。これはどうしても一人ではできないのでどうやって良い仲間を社内にあるいは社外に見つけてやることが重要である。

(3)持続的な集中力

そして持続的な集中力で、これは当然のことである。

■ Management of Technology

新技術情報をビジネスにつなげる

技術をビジネスにしていく。図1に示すように技術を商品にしたらビジネスにして回していく。ここに書けば簡単だが、重要なことはテーマ設定と利益を出すことだ。頭と尻尾になる。頭が悪ければ当然尻尾も悪くなる。当然のことながら悪い。経営者は良質なテーマ設定と途中で色々変えていく勇気とデシジョンのスピードが成功につながると考えている。

図1 新技術情報をビジネスにつなげる

図1 新技術情報をビジネスにつなげる

情報の収集&評価

確認の手順1:先ずは情報を読む
技術情報だけでは実現性や儲かるかどうかは保証されない

どのようにしてこのようなテーマを見つけたり、仲間が見つけたりしているか。
基本は新聞であるとか、特許情報とか、学会誌とか、専門誌から見つける。何がポイントかというと、そこに誰が発明者、情報発信者であるかが載っている。学会誌はコンタクトが取りやすい。新聞は誰がどこでやったかは分かり難い。問い合わせてもニュースソースを明かさない。ところが米国のウォールストリートジャーナル(Wall Street Journal)は記事に名前が入っている。オファーを出すとかなりの確率で問い合わせ先を教えてくれる。私はこれを良い先生と思って付き合っている。

確認の手順2:質問をする
質問をすることで理解が進む

発明者に質問をするQuestion(質問)の内容でAnswer(答え)の価値がきまる。特許にしても、学会誌にしてもそうである。論文も同じである。我々がそれを理解して、「私たちはこういう事をしたい」「対象の技術をこういうことに使ってみたい」を整理して質問をすると、良い回答が戻ってくる。ビジネスに至らなくても、会ってみようということになる。

確認の手順3:会って話す(M&A)
会って話すところまで行かないと情報の価値は生まれない

M&Dとは、Meet & Discussionの意味で、会って話すところまで行かないと情報は価値が無い。単なる知識で「こういうのがあるよ」で終わってしまう。これを進めるのが技術者である。単なる情報でQ&Aが出来ない情報は意味が無い。良い情報があっても世の中の流れに合ってなければ意味が無い。
我が国はどうか世界はどうかもあるが、課長であれば自分の課、部長であれば自分の部、担当であれば自分の担当している少し先のところがどうなのかを頭に置いて先を見なければならない。

セミナー写真

吉久保講師は「米国のWall Street Journalは記事に名前が入っていて、
オファーを出すとかなりの確率で問い合わせ先を教えてくれる」と教えてくれた。

■ R&DからBusinessへ(図2)

R&D研究

どこの会社でも大なり小なり力を入れているが、ここから出てくる実際の成功例は少ない。研究開発を担当したことがあるが、大変楽しい。朝行くと、スマートな研究員が話をしてくれて我社も行けるかと思うが、その聞いたものがビジネスになって収益に影響するようになるというのは、大変難しい。研究所をコントロールしてビジネスに近づけることが重要で、これがなかなか上手くいっている会社は少ない。

図2 R&DからBusinessへ

図2 R&DからBusinessへ

FS(feasibility study:フィジビリティスタディ)

良いテーマがどのようにビジネスに変わるのか。研究所や事業部を担当して、いくつか提案した。ウォシュレットもその中の一つである。セラミックの今後の取り組み、光触媒などを出したが、それをビジネスに繋げるのは大変である。
私のビジネスの中で一番失敗したのは、セラミックをこれから我が社ではどちらの方向に行くのか、電子部品に行くのか、大型の成形か、ファインセラミックの分野化かを悩んで米国の研究所とも共同で調べた。エレクトロニクスの分野は難しいからと逃げ、やさしい方に行こうと決めた。大変悪いデシジョンをしたと反省している。あの段階でもしエレクトロニクスに行っていれば、もう一つTOTOが京セラのような会社を生み出すことが出来たかも知れない。研究開発はそういう様相を持った仕事になる。

Business Start

ここで一番はマーケティング。一番のポイントは適材を当てる。人との組み合わせ。本当に夢を持ってやりたい人を当てない限り、ビジネスはスタートしない。これをうまくやるのがトップの仕事であり、これを誤ると、ビジネスに成るものも成らなくなってしまう。

Business化

ビジネスがスタートして、成功させるのは何かというと、B/S(バランス・シート)とP/L(プロフィット・ロス)による管理である。ここで月々の管理、期末の管理をする。数字の中から問題点を出せるとスピードをあげることができる。事業部を担当している時、B/SとP/Lで管理されるのが嫌だった。良い時は良いが、少し悪いと言い訳をしなければならない。その言い訳も次にその言い訳が外れていると、またその言い訳をする。逆に言うとやられるほうは大変であるが、見る方は大事なことである。

セミナー写真

吉久保講師は「美しいとか、心に温かいとか、感じが良いとか、
エモーショナル(Emotional)なところにビジネスは次にいく」と示唆してくれた。

■新事業創出のケーススタディ:ウォッシュレット

ケーススタディとして、私共が一生懸命やってきたウォッシュレットを見てみたい。
なぜウォッシュレットに注目したか、技術はどうであったか、マーケティング、技術とデザイン、ビジネスとしての確立について話したい。

ウォッシュレットの原型(図3)

初期のウォッシュレットはWash(洗浄)、Air(乾燥)、Sheet(便座暖房)の3つの機能を持つ

ウォッシュレットの原型は、私共が考えたのではなく、米国のAmerican Bidet社のHurry Ummannが発明者した。今の原型と変わらないそのものを出している。
この方はビデを作っている会社の社長であったが、お母さんの具合が悪く、お尻の始末ができなかった。お尻の始末は人間の尊厳である。自分でできないと悲しい。価値が問われるほど厳しい。従って機械を作って使ってもらった。しかしビジネスにしようとは思っていなかった。

図3 ウォッシュレットの原型特許の図面

図3 ウォッシュレットの原型特許の図面

特許でみた衛生陶器を輸入したいとマイアミに行って議論

特許は何十万件も出る中で何故この特許に注目したのか。
当時、日本の商社の米国駐在員が、この特許に注目した。その方は建材のビジネス担当で米国の状況を調べていた。この人は技術者ではないが毎土曜日に図書館に行って関連の情報を見ていた。図3の図面に着目して、これなんだろうと思った。普通はこれで終わりだがQ&AのQを「日本では衛生陶器が進んでいる。これを輸入したい」マイアミに行って議論をしてきた。これを日本のTOTOに「これどうだろうか」と持ってきた。
私の先輩のCTOが見て面白そうだと、この特許を使わせてもらおう。製品も買って使ってみようということで、輸入販売が最初のスタートであった。
当時輸入したウォシュレットのオリジナルを図4に示す。WASといい、Wash(洗浄)、Air(乾燥)、Sheet(便座の暖房)の3つの基本機能を持っていた。

図4 輸入したWAS(ウォッシュレット・オリジナル)

図4 輸入したWAS(ウォッシュレット・オリジナル)

ビジネスとしてスタートする

クレーム情報の中に重要な情報

実際に米国から持って来たものは、商品としては使えなく、輸入した全品が1年もするとクレームとして返ってきた。これはまずいということで、実際にはハードウエアを生産するとか、品質を安定させる仕事が進んだ。
時代の大きな流れがあって、住宅の中の水洗化が非常に大きな勢いで進んでいた。注目されたのは、和風より洋風。和風の水洗便器が急速に落ちて、洋風の水洗便器が猛烈に伸びたことがあった。さらクレームの中から重要な情報があった。兆しがあった。"兆"を見逃さないことが重要である。次に品質の確保、品質の確保は商品としては最も重要である。

時代の流れと、市場の状況と、それを実現する人の組み合わせが大事

ビジネスに行くときには、時代の流れ、市場の状況、そしてそれを実現する人の組み合わせが大事である。最初に米国から持ってきたものの需要先は2つあって一般の健常者方が使用する場合と、特定の方、痔が悪い方、産後の女性の方などであった。しかし品質が悪くて、一年経ったら確実に壊れた。クレームに対する要求は早く直せ、なくてはならない器具であるという要望であった。
もう一つはリピーターが多い。そこで使用を中止するのではなく、もう一度使いたいという要望であった。輸入価格にマージンを載せる程度で考えていて、儲けは考えていなかったが価格的な要求も少ない。この辺に何かあるなということを"兆"としとして注目した。

マーケティング、テレビCM

もう一つマーケティングでテレビコマーシャルがある。大変有効な場合と全く駄目な場合とがあった。我々も「おしりだって洗って欲しい」など、色々なキャッチコピーを作ったりして色々とやった。(表1参照)
15年位にわたってテレビを使って、女優を使ってテレビで広告をやってきた。
「おしりだって洗って欲しい」は日本に無い時にこのキャッチコピーを出した。これは反響が良くて、テレビに出した途端に問い合わせが来た。
「好きな人のも臭う」は、防臭、人間の出す排泄の匂いを人間が嗅がないように触媒を使って分解してしまう機能を広告にした。

表1 キャッチコピーの経緯

表1 キャッチコピーの経緯

■経営の重要性

マーケティングのまとめ

開発技術者の熱意とトップのバックアップ

経営的な立場から見てみると、興味のある将来のビジネスの方向性を決めないとダメである。その次はテーマ設定、次にQCDである。言うはやすしで、なかなか決めることが明確に出来ない場合が多いので、ここが重要だ。

マーケティングのポイントを整理する

開発の方向性を成長のある分野に向けることは重要である。事前に分かると良いが、事前に分かる人はいない。まずやってみて、兆しを逃さないようにしなければならない。

技術とビジネスとの結びつき

もう一つは、社内で持つ技術と上手く結ばなくてはならない。我々の技術は水をコントロールする技術である。便器とか、シャワーとか、お風呂とかのコントロールである。
その水をコントロールするのにエレクトロニクスを使おうということで上手くいってお手洗いの前に行ったら、自動的に水が出たり、触らないで水が出たりする機能につないでいる。

ウォッシュレットビジネスの更なる進化

水玉にして、お湯はたっぷり、エネルギーを3分の1に

ここでウォシュレットは、単にお尻を洗うということではなく、競合他社も参入してきて、差別化しなければならない。何が差別化というと、お湯が直ぐでる、直ぐに冷たくならない。排泄臭を抜いてやる。以上の2点に的を絞ることとした。
テーマ設定の重要性が問われるタイミングである。

図5 水玉発生で快適洗浄

図5 水玉発生で快適洗浄

物理系の技術者が取り組んで解決した

湯切れのない洗浄、永久にお湯の出る機能が必要。これが営業の強い要求であった。技術者は100Vの電源でそれ以上のエネルギーが出る訳がない。「無理な注文をしてもらっては困る」で話が終わってしまう。
それを物理系の技術者が取り組んで、お湯がたっぷり連続して出るように、更に小型化にする開発に取り組む。物理のプリンシプルに反するから無理だと常識的な判断が出ていたが、これを解決する方法を考えた技術者がいた。
お湯の出るところを一秒間に何回か切る。玉にして出す(図5)と、お尻は一杯出ている感じになる。エネルギーは3分の1になる。やり方を変え、お湯切れの無いものができた。

潜在的なエンドユーザーからの欲求

デザインを先行させ、トイレ空間が進化(図6)

技術と商品が世の中の要求に応じて発売されている。ではこれからどうなるのか。
デザイン的な要素が加わってきた。ウォシュレットとトイレ空間を組み合わせてトータルなトイレ空間を今後考えて行ったら良いということが、デザインを先行する中から生まれた。
最初に大きなタンクが付いていたウォシュレット(図6 Type1)が、次にセラミックヒーターの発熱方式で無く、臭いを抜くとか、お湯を連続して出すとかの機能を組み込んで成功してきた。(Type2)
次には、便器に組み込んで、便器の上にウォシュレットが乗って一緒になった。(Type3)
次にタンクが邪魔だということになるという要求が出てきた。(Type4)
汚物を流すのに水が無いと流れない。だからタンクを取ることはできない。物理のプリンシプルに反するということで、無理とされていたが、実際には水道の圧力をうまくコントロールすることで、実際に流すことと同じ効果の方法を考えた。「ウォシュレット+便器+収納」という3つの機能を集約した便器(Type5)に仕上がっている。

図6 ウォシュレットデザインバリエーション

図6 ウォシュレットデザインバリエーション

ビジネス方向性の決定、世界への飛躍

それまでウォシュレットは米国でもトライした。現地コンサルに相談しテレビ広告まで実施、ノーリアクシン、全然だめであった。しかし米国で便器は節水ということで取り組んで進めた。時流に乗って米国のビジネスに勢いがでてきた。
中国は大変な人気である。
ヨーロッパは苦戦している。ドイツは2年前からやっているが効果は出ていない。

施工、メンテの事業を別会社で推進、拡大

ウォシュレットと便器と一体になったものに収納の箱を付ける、手洗いを付ける、鏡をつける、こういうものをセットにして売り出している。(図7)
メンテナンスの事業をやる会社が必要になり、TOTOメンテナンスというメンテをする会社と、TOTOエンジニアリングという施工する会社を作った

図7 国内ビジネス:施工ビジネスの創出

図7 国内ビジネス:施工ビジネスの創出

セミナー写真

「米国から来た人にワークショップをやって、これを実際に使って貰うことをやったりした。
全部の方が素晴らしい、良いという。楽しみである」話す講師の吉久保氏。

結論

本日は、『テーマ設定』ということで話しをした。
ビジネス成功の要件は、

1.良いテーマ
2.良い仲間
3.そして持続的な集中力

実際にテーマが設定された後、社内で周知し、ベクトルを合わせるのにデザインが重要になる。私がいうデザインは形や色彩がどうこうではなくて、経営のデシジョンにデザイン機能を入れると非常に早くなって理解がしやすくなる。中でも最近は3Dが有効に使えるので、デザインを経営のツールに入れていくと考え方が良い。

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質疑応答

世の中の流れに乗ること、日本人の生活パターンにマッチすること

質問(経済産業省 谷明人氏):研究からシーズ志向でやるパターンと、最近は課題解決型でやる方法がある。研究マネジメントのところから問題提起をしていただけることは、考えが及ばなかったところである。探って頂いてありがたく思っている。どんどん進化することで後発との差別化を実現している。

回答(吉久保誠一講師):振り返って見ると、良いテーマにあたったということと、世の中の流れに乗ったということもあるし、日本人の生活パターンにマッチしたということもある。物理学を専攻した技術者をこの開発に相当投入した。物理を専攻した技術者は物の見方が少し違う。本質から見る。それが良かったと思う。

セミナー写真

「企業は物理を専攻した人を余り採用しないが、物理学を専攻した技術者をこの開発に投球して成功した」
と語る講師の吉久保氏。

ウォシュレット、新築分譲住宅ではほぼ100%設備している

質問(小平和一朗専務理事):現状、新規の公共施設のトイレは100%に近く設備されていないか。

回答(吉久保講師):100%までは行ってない。分譲住宅ではほぼ100%がウォシュレットになっている。

意見(杉本晴重元沖データ社長):ウォシュレットはかなり昔から使わせてもらった。2点ほど質問したい。一つは海外の話で、米国に駐在していて米国には無い。米国人、日本に出張してきてホテルのウォシュレットを経験するとこんなのあると良いという。その時、議論した。一つは習慣で、米国人は朝、シャワーを浴びる。それで用を足してしまうというのでいらないという外人の人がいた。しかし、ポテンシャルはあると思う。
もう一つは、ポータブルのものもあり、旅行に持って行くが使い勝手が悪い。ニーズはあると思うが。

テーマ設定は経営者のセンス

質問(坂巻資敏元リコー常務執行役員):結論の「良いテーマ」「良い仲間」「そして持続的な集中力」、全くその通りだと思う。良いテーマを選ぶにはどういう工夫をした方が良いのか。

回答(吉久保講師):テーマ設定は、経営者のセンスである。技術知識や技術情報を単に色々な人が経営者や管理者に報告してくる。その時に「米国の文献にこういうのが載っていた」とか、「展示会でこんなのがあった」とか。そのままではテーマにできない。これからどういう仕事ができるのか。我々の考え方をまとめる能力、これの訓練を研究所でも事業部でもできているか。そして行って見て、触って、それからやりたいと言ってもらわないとデシジョンする人は全てを見るわけにはいかないから、それでやろうとすると失敗になる、成功する率は低い。しかし余り喧しく言うと、言ってこなくなってしまう。

災害が起きると我々に供給される分が無くなる。もう少しストックを持って欲しい。

意見(西河洋一理事長):茅ヶ崎のTOTOの工場を見学した時、「TOTOは非常に技術力が高くて次から次と良い技術が出てくる。隠してある技術はあるのか」と質問をしたら。「ある」という。「小出しに出さないで、一度にだせば独走態勢で行けるのではないか」と思う。先日テレビを見たら段ボールが紹介されていた。段ボールも売ったらと思う。あと東日本や大島で災害があったが、災害が起きると我々に供給される分が無くなってしまう。もう少しストックを持って欲しい。

特許は対価を払ってでもノウハウを吸収してやるべき

質問(佐藤尚秀寿精版印刷㈱ 取締役):特許を使わずにできないかの検討はされたのか。

回答(吉久保講師):基本的には特許は対価を払っても使った方が良いと考えている。基本的は利用して、その先をやったほうが良い。

セミナー写真

吉久保講師は「中国人が日本語を勉強するのは、日本から情報を取ることが目的である。
それは防御することはできない。防御しようとすると商売はできない」と語る。

TOTOの市場シェア50%

質問(佐竹右幾サンシン電気取締役CTO):TOTOは間違いなく、ウォシュレットの先行者として開発に取り組まれたと思うが、現在のシェアは、どの程度か。

回答(吉久保講師):最近は50%程度である。

コンサルを有効に使うのは難しい

質問(大橋克己元クラレ常務):クラレにいて繊維を長くやって、後半は歯科材料をやった。海外の展開もやったことがある。先生のおっしゃっている電子技術者を入れてやったこと良くわかる。海外でうまくいかないのは良く分る。文化的な、プリミティブなところから取り組まないとうまくいかない。海外でマーケティングでは、現地のコンサルを使ってやったことがある。文化をしっているので、有効であった。

回答(吉久保講師):米国のビジネスでは、コンサルタントを良く使った。プレゼンテーションが良い。資料がきれいである。聞いているとほれぼれとして、これならやれるかと思うが実際は要注意である。

日本のセラミックの技術は高い

質問(淺野昌宏元丸紅ネットワーク社長):京セラのようなセラミックの分野に出たらとの話があったが、そういう分野に出ることはあるのか。TOTOは便器のイメージが強いが。

回答(吉久保講師):一番大きなミスは、エレクトロニクスにいくか、機械系にとどまるかの選択をしたときに、エレクトロニクスは難しいから、ノウハウも無いし、次にしようと機械系に出た。水を止めるパッキンなど。それが今思えばミスであった。ノウハウが無いのは皆一緒であった。スタートが間違った。現在はセラミックをかなりやっている。ただ特殊な分野である。まだまだ他とは2桁ほど違う。日本のセラミックの技術は高い。

セミナー写真

「研究審議会などで聞いていると駄目だと分かっても顔を見ると「それを止めろ」とは言いにくい。
CTOは時々変えた方が良い」と語る吉久保講師。

中国は巨大市場、取り組まなければ

意見(杉本):中国のビジネスをしたが、パートナー選びは重要である。工場建設、部品の調達など、大変である。これからは人が重要で、人が辞めてしまうと技術は流失ししまう。「中国はリスクがあるのか」と問われるとリスクは沢山ある。しかし中国は巨大市場なので、取り組まなければと思っている。

テーマの設定、組織の方向性はトップと考え方が完全に合っていないとだめ

質問(小平):TOTOは便器という陶器を焼いていただけの会社がウォシュレットという新しい技術開発に取り組んで、大変な開発上の困難を克服して今日の市場を作ったことに先生のお話を聞くと感心する。良く上司が開発を許してくれたと思う。

回答(吉久保講師):技術者を集めるとか、テーマを設定するとか、組織をある方向に向けるとかはトップと考え方が完全に合っていないとだめである。トップの考え方を変えて進め事はできない。したがってトップは重要である。進める時に社長も同じ考え方を持っていたので、場合によっては俺が考えたくらいに思っているかもしれない。そのようにならないと駄目である。

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