一般財団法人アーネスト育成財団

技術経営人財育成セミナー(第15回)変革期のリーダーが学ぶことは何か

ビッグデータ活用の最前線
-独自開発のデータマネジメントプラットフォーム-

上村 崇(うえむら たかし)
(株式会社ALBERT 代表取締役社長)

日時 2015年6月15日(月) 17:00~19:00 (講演90分、討議30分)
場所 一般財団法人アーネスト育成財団事務所内 アクセスへ
参加費 3,000円(終了後の懇親会費用を含む)
定員 最大18名(定員になり次第締め切ります)
申込方法 FAX 03-6276-2424 または Eメールoffice@eufd.orgにて
主催 一般財団法人アーネスト育成財団

講演PDF(案内)(986KB)

マーケティング領域におけるビックデータ活用の先端企業(株)ALBERTの上村崇代表取締役社長を迎えてのセミナーを開催します。ALBERT社は、分析力をコアとするマーティングソリューションカンパニーです。高度なマーケティングソリューションを提供するコアコンピタンスとなっているのは「マーケティングリサーチ」「多変量解析」「データマイニング」「テキスト&画像解析」「大規模データ処理」「ソリューション開発」「プラットフォーム構築」「最適化モデリング」という8つのテクノロジーで支えられている分析力です。独自で開発したアルゴリズムや手法を使っての解析によって、この分野の優位性を確保しています。 ALBERTは、東証マザーズ市場に本年2月に上場いたしました。
講演では、企業に蓄積されている大量データを分析して、企業の意思決定や問題解決を実現する最先端の事例についてお聞きします。ビッグデータを利用してのマーケティングの応用事例報告を聞いて、変革の時代の市場戦略、技術経営戦略について、講師との意見交換の中からも学ぼうと考えています。

【講師略歴】

上村 崇(うえむら たかし) 氏

大学卒業後アクセンチュア株式会社入社。戦略グループにて大手電気メーカー・OA機器メーカーの事業戦略及び営業戦略プロジェクトに従事。
2005年7月レコメンデーションの専門企業、(株)ALBERTを設立し代表取締役社長に就任(現在)。
数多くのWEBサイトのコンサルティング及びプライベートDMPの導入支援に携わっている。

株式会社ALBERT 代表取締役社長 上村 崇(うえむら たかし)

『ビッグデータ活用最前線』

司会(小平和一朗専務理事):今日は「ビッグデータ活用最前線 –独自開発のデータマネジメントプラットフォーム」というテーマでお願いをしている。「ビッグデータ」はよく聞くことがあるが、アルベルトの上村社長はビッグデータビジネスをきちんと立ち上げているという事で、どういう分野で、どういう事を、どの様に運用しているのか非常に関心を持ち、今日の講演をお願いした。

講師の上村崇氏

「分析と言うのは、エクセルとか、オフィスのデータで分析出来る位の容量を四則演算の
延長で集計していくモノが多かったが、ビッグデータ時代の分析は、超大容量のデータで、
かつ形式が整っていない様々な形式のバリエーションがある」と話す、講師の上村崇氏。

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講演概要

講演内容詳細 (550KB)

アルベルトの一番の強みは、高度なデータ分析のノウハウおよび技術

講師(上村崇(株)ALBERT代表取締役社長):アルベルトの一番の強みは何かというと「分析力」である。「高度なデータ分析のノウハウおよび技術」を持っている事が強みになっている。「ビッグデータ」という言葉が生まれる前から、今世の中で注目されている「データを分析する事によって企業が意志決定する」という事を目指して事業展開している。
サービスの一つとして「アナリティクス・コンサルティング」という事業をやっている。ビッグデータ時代の分析は、超大容量のデータで、かつ形式が整っていない様々な形式のバリエーションがある。そういったものがリアルタイムに蓄積されていく。「大容量、種類が複雑かつリアルタイム性がある」と言った条件を満たしているものを「ビッグデータ」と呼ぶが、ビッグデータ時代の分析は、エクセルの四則演算時代の分析とは全く次元が違って、インフラの技術も重要で、分散処理の技術も重要である。それ以上に「データマイニング」と呼ばれる大量データの解析によってインサイトを見つけるための高度な分析手法が必要になる。

データ分析部という専門部隊に分析技術・分析力を持っている人を集めている

そういった分析が出来る人員が日本に不足しており、どこの会社も欲しい人材ではあるものの自社で抱える事が出来ていない状況がある。
日本には統計を専門にする学部も学科もない。あるとすれば金融工学の中で統計の知識を学んでいる者であったり、医学部で医療統計を勉強している者であったりとか、様々な学部に統計知識が必要とされているものの、専門の学部、学科というのが無い、散在しているという状況があって、なかなか「データサイエンティスト」と最近呼ばれている技術・ノウハウを持った人間が育ちにくい環境がある。
分析部門だけで20名を超える規模になっている。本当の意味でのデータサイエンティストを20名抱えている会社は世の中にほとんど無いと思う。それが弊社の一番の強みになっている。

上村崇氏

「データサイエンティストを20名抱えていることが
弊社の強みになっている」と話す、講師の上村崇氏。

ビッグデータを活用するサービスとは何か 

いま提供しているビッグデータ活用の領域のサービスとして2つある。
一つが「アナリティクス・コンサルティング」という事で、クライアントからビッグデータを預かり、そのデータを弊社の分析部門で分析し、その結果をレポーティングしていくというビジネスである。この「アナリティクス・コンサルティング」の領域が売上の10%位を占めている。この領域があまり大きくなってしまうと、元の労働集約型のモデルになってしまう。
次に、高度な分析を提供しながらも、その分析案件で編み出したアルゴリズム・分析手法をこちらの「マーケティング・プラットフォーム」サービスでシステムにして提供している。こちらの「マーケティング・プラットフォーム」事業が売上の90%を占めている。

データに基づいて意思決定

「マーケティング・プラットフォーム」とは何かと言うと、クライアントが蓄積可能なビッグデータを自動的に分析して、その結果に基づいて経営者が見る為のダッシュボードを提供したり、「マーケティング・オートメーション」としてメールやウエッブ、ダイレクトメール、店舗の運営、報告といったものを自動的に配信していく。その結果のレポーティングも自動的に行っていく。
データに基づいて意思決定、必要のある部門やチャネルのおけるデータの蓄積から分析、活用までの一貫したシステムというのを提供するのが「マーケティング・プラットフォーム」のサービスである。

ビッグデータ活用により実現したいことは何か 

矢野経済研究所のアンケートで「ビッグデータ活用により実現したいことは何ですか」を関連企業に調査した所、4割近くが「マーケティング課題をビッグデータによって実現したい」と回答されている。
「弊社は分析力をコアにします」という事だが、この分析力を活用して「マーケティング・ソリューション」を提供していくという事で、現状、マーケティングの領域にフォーカスしている。
これは自分たちが取り組んできた領域がマーケティング領域だったので得意な分野をやっているという事だが、結果としてビッグデータ活用の中心マーケットが「マーケティング課題の解決」であるという事があって、自分たちが取り組んでいくべきと思っている領域が、クライアントから見てもメインストリームになっている事に自信を深めている。

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IoT、各種センサデータの活用

二番目として「各種センサデータの活用」が言われていて、この二つを合わせて過半数になる。
この「各種センサデータ」というのはまだまだ新しい領域で、最近Internet of Things=IoT、モノのインターネットやM2Mと言った領域が世界的に注目されていて、そこがビッグデータの次の活用領域として伸びてくると言われている。
今まではデジタルデータと言うと、このようなパソコンを目の前に置いて、椅子に座ってアクセスして、例えばeコマースのサイトで買い物をするとか、ウエッブサイトを閲覧するとか、そういったものから取れてくるデータがほとんどだったが、スマートフォンの普及であったりやセンサの普及で、ありとあらゆる場所・モノがネットにつながり、データセンターにデータを送ってくる世の中になった。
爆発的にデータの種類やデータの量が、このM2M、IoTによって増えている。そういったデータを活用していきたいというニーズが二番目に大きい。このIoT領域・センサデータの領域にも非常に可能性を感じて、いま取り組みをしている状況である。

IoTに対応したビッグデータ・リアルタイム分析サービス

この半年くらいでIoT、M2Mという事で急速に注目を集めているが、弊社は2014年3月、1年以上前に「M2M、IoTに対応するためのビッグデータ・リアルタイム分析を行うサービスを開始」というニュースリリースを出している。アマゾン社のKinesis(大規模な分散データストリームをリアルタイムで処理するクラウドサービス)というインフラを活用して、センサデータの分析領域に進出している。

データセンサネットワークの構築

センサのデータというのは、当たり前だがセンサが無いと取れない訳であるが、弊社の場合、とれたデータを分析して活用するという事がメインだが「そもそもデータが取れていません」というクライアントに対して、データを取るところからお手伝いをしている。
シナノ電子(センサーメーカー)と提携して「データが取れていないお客様にデータセンサネットワークの構築をご提供する」という発表を4月にしている。 

石塚利博氏

「矢野経済研究所のデータは国内ニーズだけか」と問う、石塚
利博(株)立ハイテクノロジーズ知的財産部主管技師(左)。

事業の紹介:マーケティング・プラットフォームsmarticA!DMP

弊社が提供している「マーケティング・プラットフォームsmarticA!DMP」を説明する。DMPは一般名称でデータ・マネージメント・プラットフォームの略称である。このプラットフォームは幾つかのシステムで構成されていて、「大容量データウェアハウス」を提供している。
このデータウェアハウスは、例えば先ほどの消費者の行動データ、「どの様なCMに接触したのか、何処で何を買ったのか」といったデータを、企業が持っている購買データ、POSデータの場合もあるし、eコマースのリアルタイム購買データの場合もある。
他にもコールセンター・コンタクトセンターで「どの様な問い合わせをしてきたか」を、その企業が持っている商品マスターのデータ、あらゆるデータをこのデータウェアハウスの中にリアルタイムに蓄積していく。「その蓄積のための箱を準備する」と言う事が一つある。
次に、ここにデータが溜まると、この「データマイニングエンジン」というシステムでビッグデータを自動的に解析する。具体的には、例えばあるユーザが「次に何を買うのか」といった分析であったり、ある店舗があった時に「その店舗に明日何人のユーザが来るのか」という予測であったり、様々なニーズによってこのデータマイニングエンジンがデータを自動的に分析することができる。

広告ビジネスでの事業

広告領域ではどの様な事をやっているかを説明したい。
例えば私が今デジカメを探していて、あるメディアでデジカメを見たとすると当社のエンジンがそのログを解析してこの人がどんな種類のどんなデジカメを探しているのか、と言う事を特定して、いろんな広告メディア、例えば食べログでレストランを調べた時とか、日経新聞のウエブサイトでニュースを読んだとき、こういった枠が出てきて、「今あなたはデジカメを探しているよね。8万円から9万円のランクのものを探していますよね」という事で、自動的にターゲティングして広告を配信する。
今までは誰にでも同じ広告を配信していたのが一般的であった。しかし、ユーザのログを解析して、その人がいま正に探しているモノをターゲティングして配信するという事が出来る。

データサイエンティスト養成講座の出前研修

弊社に「データを渡して分析して欲しい、システム化して欲しい」というニーズの他に、「自社にそういった分析ができる人員を持ちたい、専門部署を作りたい」というニーズも多々あり、そのような企業に対して『データサイエンティスト養成講座』と言う事で、弊社の会長の山一などを講師として派遣して、新入社員研修であったり、マネージャー向けのキャリア研修の中でデータサイエンティストの養成をお手伝いする様な事もやっている。
ほんとに基本的な統計の基礎知識、例えば「相関係数とは何か、t検定はどうやるのか」といった非常にベーシックな所から「高度なベイジアンネットワークをRで行うとか、SPSSを使ってクラスタリングをする」といった実務レベルのものまで、企業の要望に応じてコースを組んで、データサイエンティストの養成講座を提供する事もやっている。

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質疑応答

ノキアにとってインドの顧客はマジョリティではなかった

司会(小平和一朗専務理事):質問を伺いたい。

質問(奥出阜義元防衛大学校教授):最初の立上げ時のシステム的なスキルは、アメリカを勉強して、その延長線上でやってきているのか、それとも日本独自のオリジナルでやっているのか。

回答(上村講師):スキルの中身と言う意味では、国内独自である。国内で経験を積んできたメンバーが集まっているので、基本的にアメリカのノウハウを持ってきたというものではない。

大量データの分析が企業の意思決定に使われる

質問(大橋研究員、元クラレ常務):私はマーケティングの仕事をして来たが、データというものが昔は企業の中にだけにしかなかったが、今は顧客との間のインターフェースが出来る様になった。アナログ的な分析力しかなかった所に、このような形で対話もなく話をしたこともないユーザが、どのような行動を起こすのかが分かるようになった。もう一ついま実践的にマーケティングをやっている方の方向性の確認だとか、経営者が自分の企業がやっていることが選択として正しい方向に行っているのかと言う事がまだ分かり難い。だから企業そのものが周りにあるビッグデータを活用する事をどんどんアピールされたら良いのではないかと思う。

回答(上村講師):なかなか理解され難かったり、トレンドワードだけ一人歩きして、逆にそのことが「ビッグデータは役に立たない」とか、「よく分からないよね」とか、一過性のものに終わらせてしまうという事に非常に危惧している。弊社としては「ビッグデータ」という言葉が生まれる前から「大量データの分析が企業の意思決定に使われる。人類がデータの分析を元に意思決定していくというのは普遍的な事だ」と思い、しっかりと大量データの活用と言う事を世の中に理解していただきながら成長して行きたい。「良くわからない」というクライアントもまだまだ多いので、どのニーズからまず拾っていくべきなのかといった事も模索し、進めていく。

大きい概念ではないものも、ビッグデータとしていろいろなものに活用している

質問(角):ビッグデータの活用が日本の国力や経済力に物凄く影響すると思うが、矢野経済研究所のデータ分析でも、22%は何をして良いのか分からないとある。顧客のポテンシャルが上がらないとダメで、ユーザの技術者やアナリストを養成して初めて健全なる発展をする。そのためには、ユーザとこちら側がどう人材を養成していかなければいけないか。

回答(上村講師):そこはまだまだ明確な答えを持っている訳ではない。業界団体として「データサイエンティスト協会」を作っており、そこにはブレインパッドとか、弊社とか、日立とか、電通とか、ビッグデータ業界を盛り上げていこうという人達が集まって、各業界にどんな人材が必要か、どのようなノウハウを貯めていくべきか、と言う事を整理し始めた。その整理が終わって啓蒙の段階に入って行く。

意見(上川晋一郎DSP株式会社代表取締役):いままで自分で考えていたビッグデータの概念とはかなり違っていた。自分が考えていたのは「JRのスイカとかで集めているデータでどういった行動をしているか」とか、そういう大きな概念だったが、今回聞いたのは大きい概念ではないものも、ビッグデータとしていろいろなものに活用しているというのは、本当に勉強になった。

「システム投資=ビッグデータ活用」という時代になって行く

質問(淺野昌宏理事、アフリカ協会副理事長):10年後の市場規模はどの位になるのか。顧客から言うと広告費の一部、商品開発費用の一部、あるいは営業費用の一部といった所からコストが出るのか、トータルの市場規模はどの位になるのか。

回答(上村講師):外部のデータに頼らざるを得ないが、少なくとも2020年、5年後に3,400億円と言われていて、さらに5年後に5,000億円、6,000億円は十分に超えいく規模感だと思っている。いま国内のマーケットの中で、SI領域でシステム投資として使われている企業の財布が、よりデータ活用・データにまつわるシステムになって行くと思うので、今現在のシステム投資のマーケット全体が日本のビッグデータのマーケットになって行くのではないか「システム投資=ビッグデータ活用」という時代になって行くのではと思う。

一人ひとりに最適なメッセージを届ける時代になって行く

質問(淺野):いまのシステム投資のマーケットを削っていくという事か。あるいは広告費とか、商品開発費用とか、どの様な分野のシェアを捕って行くのでしょうか。

回答(上村講師):システム開発・システム投資の予算が使われる。広告テクノロジーの領域では、マス広告の領域を削って行くと言われているのがアドテクノロジーで、マスに使われていたものをデジタルに置き換える事によって、一人ひとりに最適なメッセージを届ける時代になって行くと思うので、テレビ広告屋さんに投下されていたものが、一部ビッグデータ市場の中に数えられるのだと思う。

センサの市場を制する者がマスのマーケティングを選別する

意見(西河洋一飯田グループホールディングス社長、当財団理事長):弊社は1日100棟、1年で36,000棟、実際は40,000棟やっているが、これからはセンサの市場を制する者がマスのマーケティングを選別するのかな。それはどこかの電機会社がやるのかなと思う。例えばいま電力が自由化するとか。そうするとHEMS(注)という売電の時に使うのがあるが、あれは通信機能が付いているから、ちょっと高級なHEMSを付ける事で、すごい住宅データが集まる。その住宅データを元にしてデータのプラットフォームをセンサの会社がたぶん持つと思うが、それに対して色んな物販の会社とかがアクセスしてきて、そこでアライアンスを組んで、例えば「この家庭は共働きだから、夕方になったらお得情報を配信する」とか、その様な時代になるのではないか。

回答(上村講師):貴重な意見、ありがとうございます。

(注)HEMS:Home Energy Management System の略である。 家庭で使うエネルギーを管理し、節約するシステム。

意見を述べる西河洋一理事長

「電力が自由化されるとHEMSという売電の時に使う電力計がある。高級な
HEMSを付ける事で、住宅データが集まる。その住宅データを元にデータ
のプラットフォームをセンサの会社がたぶん持つと思うが、それに対して
色んな物販の会社とかがアクセス」と意見を述べる西河洋一理事長(右)。

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