技術経営人財育成セミナー(第7回)変革期のリーダーが学ぶことは何か

日本の大学院MOTコースで経営者が育つか

- CEOが具備すべき知識、キャリヤーと見識とは -

角 忠夫(すみ・ただお) (松陰大学大学院教授、(株)むさし野経営塾塾長)

日時 2013年9月3日(火) 17:00~19:00 (講演60分、討議30分他)
場所 一般財団法人アーネスト育成財団事務所内 アクセスへ
参加費 3,000円(終了後の懇親会費用を含む)
定員 最大18名(定員になり次第締め切ります)
申込方法 FAX 03-6276-2424 または Eメールoffice@eufd.orgにて
主催 一般財団法人アーネスト育成財団

パンフレット(0.97MB)

2003年が日本のMOT元年といわれている。失われた15年を過ぎ、今世紀の日本の製造業の復権を意図し、文科省、経産省が中心となり日本の主要大学にMOT専門職大学院を設置し、産官学連携して技術系社会人管理職を大学に呼び戻し、経営学を伝授し、グローバルに戦える強い経営者の育てようと意図した。それから10年経過し、デグリープログラム(修士学位付与)が年間約40機関1,500名、ノンデグリープログラムで30機関2,400名のコースが設けられ、既に1万人以上のMOT修士が活躍していることになっている。
講演者角忠夫氏は電機産業で約30年管理・経営職に従事後、請われてMOT創設時から10年間社会人学生向けのMOTコースで教育する傍ら、中小企業の経営者やその二世達を鍛える経営塾を指導し、このコースでも300名の卒業生がそれぞれの企業で活躍している。これらの経験を踏まえ、現状のMOT専門職のカリキュラム、受講生の層と意識、指導する教授陣のキャリヤー、知識、見識、受講生達の卒業後の職場のポジションや活躍状況などを体験的の概観し、アベノミックスに確かなリヤリテーを付与し、本格的な製造業の復権を果たすトップを育成する経営者養成教育のあるべき姿を参加者とともに考えたい。

【講師略歴】

角 忠夫(スミ・タダオ)氏

京都大学工学部電気工学科卒業、(株)東芝取締役電機事業本部長、(株)芝浦製作所代表取締役社長、芝浦メカトロニクス(株)代表取締役社長、(株)むさし野経営塾代表取締役塾長(現職)、松陰大学大学院経営管理研究科教授(現職)、北陸先端科学技術大学院大学客員教授(現職)

(著書)『改訂エンジニアリングマネジャー』M・K・バダウィ著、角忠夫訳、日科技連(2005)

『「産業のサービス化論」へのアプローチ』共著、社会評論社(2010)他

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松蔭大学大学院 教授、(株)むさし野経営塾 塾長  角 忠夫氏講演

『日本の大学院MOTコースで経営者が育つか』

「MOTコースで経営者が育つか」というテーマを一緒に考えたい

こんな暑い時にタイトルだけでもセンセーショナルなタイトルにした。タイトルに偽りがあるか無いかは、話を聞いてからのお楽しみである。「MOTコースで経営者が育つか」というタイトルでは「育ちます」とも「育ちません」とも言っている訳ではない。こういうコースを通じてアベノミクスの第三の矢の成長戦略をたくましく実践することができるリーダーが沢山出てこなくてはいけない。日本のMOTが今後どうあったら良いかという問題を皆さんと一緒に討議をして、方向まで出なくても討議を踏まえて皆さんの仕事に反映して頂ければと思う。
今日は、私の考えるMOTはどうあるべきかをラディカルに話をしたい。

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受講生と共に「MOTコースで経営者が育つか」という課題に取り組んだ。活発な意見交換が出来た。

講演概要

講演内容詳細 (184KB)

日本の技術者の経験が経営にどのように生きるか

系の中身は違っても技術者のやってきたことは経営で生かせる

ここには技術系経営者の皆様が多いと思うが、技術者がモノを設計する場合、とにかく入力と出力に対しての系である。例えばエアコンシステムを最適化する系はどうあるべきかを、自動制御で設計することを技術者はやってきている。経営者の立場で考えたら、エアコンの設計でも、会社野経営で、あるいは一つのセクションの管理であろうが、ブラックボックスの系の中身は違っても、技術者のやってきたことは、経営という立場でも生かせる延長線上の話である。そういう系を最適化するという仕事を、これは技術問題だ、経営問題とは違うのだと言わずに経営にその経験が生きるという考えをもっている。

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図1 企業の目的と経営者の責務

もっと技術者が経営の面で活躍すべきだ

日本の電機産業のCEO、さすがに電気の世界は技術系が半分以上を占めている。(図2参照)ソニーとかキヤノンとかは文系である。東芝は毎年多い時1,000名の採用で技術者を800名程採用しているが技術者が不作で、今年になり原子力の佐々木さんが交代したが、歴代事務系の経営者が多い。
会社を経営する上で、いまさら事務屋か技術屋だとする問題ではないという見方と、それから技術の仕事と経営の仕事が連続的に同じ手法が同じ考え方が使えるという点からいったら、1,000名のうち800名も技術者がいたら、もっと技術者が活躍しても良いと思う。

ソニー 平井一夫社長 国際基督教大(教養)12 52
パナソニック 津賀一宏社長 阪大(基礎工)12(社長就任年)
カリフオルニア大(情報)修士
56
日立 川村隆会長
中西宏明
東京大(電)
東京大(電)10
73
67
東芝 西田厚聡会長
佐々木則夫副会長
田中久雄社長
東京大院(経)
早稲田大(理工、機械)
神戸商科大(商経)13
69
64
62
三菱電機 下村節宏会長
山西健一郎社長
京都大(工)
京都大(工)10
65
59
NEC 矢野薫会長
遠藤信博社長
東京大(工)
東京工大(理工)博10
69
59
シャープ 奥田隆司会長
高橋興三社長
名古屋工大(工)院12
静岡大(工)院13
59
58
キャノン 御手洗富士夫会長、社長 中央大(法)12(再登板) 78

図2 現代の主要電機産業のCEO

技術系管理者が具備すべきウエポン(武器)と教育

技術者は経営者に向いている

今盛んに技術者は経営の分野でしっかりしなさいと言う意味は、技術者が管理者に適しているからだ。その理由は、現在の経営に必要な技法や、系を最適化する技法はエアコンシステムであれ、研究所のマネジメントであれ、会社の経営であれ、基本的な手法は同じで使えることだ。

(1)現在の経営に必要な技法に熟達している
(2)現場、現物に立脚したビジネススタイルで育つ
(3)プロジェクトマネジメント十分に訓練
(4)技術開発と経営のビジネスプロセスは酷似
(5)設計と経営は酷似
(6)問題解決力、リスクマネジメントに優れている

T型人間、Π型人間

技術者は技術を深く掘り下げることに関心がある。深く掘ろうと思ったら幅が出てこないと掘れない。深く掘れば掘るほど、技術の幅が必要である。一本掘ったらもう一本掘る。(図3参照)
するとその両方の間が埋まって幅が出てくる。技術者の幅が広くなる。
技術者は、現場、現実に拘るので、自分の経験とか、自分のやってきたことに対する拘りをもっている。それは、欠点でもあるし、うまく使うと長所でもある。
そういう面から言うと深さと幅を出すためには、マネジメントをやる前に出来るだけ沢山仕事をやって幅を広げておくべきだと思う。

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図3 T型人間、Π型人間

ビジネスファンダメンタル、ウエポン(武器)

MOT教育を受講したことにより管理者やエグゼクティブとしてグローバルに活躍していくためのファンダメンタルズについて再確認し、とりわけ技術系マネジメントの弱点と言われている部門を強化ないしは自己研鑚する良い機会になることが望まれる。
そのために何を具備すべきかと言うと次の7点である。
(1)Reading:読書力 スピードをつける。読書習慣の復活
(2)Listening:受講力 聞き取る力
(3)Asking:質問力
(4)Thinking:思考力
(5)Writing:文章力
(6)Speaking:発表力、説得力
(7)Showing:表現力、ITリテラシー

経理と法律に注力

この時代のリーダーの資質として具備しなければならないものが次に4つである。
(1)ITリテラシー
(2)英語  インターネットの普及でより英語力の向上が望まれる。
(3)経理(数字)  会計とは事業の(世界共通の)言語である。
(4)法律  
に強いことがシビルミニマムである。MOTコースとしては、(3)(4)に注力する必要がある。

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「リーダーの資質として具備しなければならないものに、経理や法務に注力する必要がる」と
熱のこもった講演をしてくれた講師の角氏。

日本のMOT専門職大学院の教育の現状

平社員、係長、課長、部長、経営者でそれぞれ勉強すべきことが違う

受講生の立場でどのレベルの人が来ているか。
卒業してどのコースに出るか。(図4参照)
今会社のレベルで、平の段階(入社10年目までの段階)から、主任・主務・係長のいう監督者レベルの第1のレベル、第2のレベルで管理者(部課長)、第3にレベルで経営者。
レベル1、レベル2と、レベル3で、それぞれ勉強すべきことが違う。
第1レベルの主任、主務、係長の監督者レベルに要求されるのは、技術的能力とチームマネジメントが非常に大事であるし、第2のレベルになると技術的な能力と経営管理的な能力、第3のレベルになったら、人間力と管理的能力が重要になる。(図5参照)
MOTカリキュラムを見ると、人間的能力を育成する部分が抜けている。人間的能力を触発するための教育はどうあるべきなのか。

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図4 MOTカリキュラム受講への提案

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図5 管理能力配分 MSM(Management Skill Mix)

あるべきエクゼクティブの要件は、図6に示す心技体の教育である。
管理能力はビジネススクールで、マインドの教育はインハウスでやって、技術的能力はOJT実践でやる。

    具備すべき要件例 カリキュラム
スキル 論理的思考力・判断力
経営知識(フレームワーク)の理解
問題を特定し、分析する力
戦略的思考力と独創性
深い素養(アナロジー)
コミュニケーション力、ITの駆使
経理、数値に強い、外国語(英語)力
MOT
ビジネススクール(EX)
自己啓発
マインド
事業のオーナーシップ
自信と謙虚さ、起業家精神/創造性
企業ビジョン構築力、先見性
企業倫理観/コンプライアンス
多面的かつ高い祖座
人間力、人間的魅力、色よう力
インハウス研修
行動
決断力
執行力
実績
現場主義
率先垂範
行動・リーダシップ
接渉力、交渉力、国際性
キャリヤーパス
インハウス研修
全社委員会/プロジェクト活動、
海外実務経験

図6 あるべきEXECTIVEの要件

MOTコースの目的、ゴール

MOTコースのゴールは何か。

それぞれの専門職大学院でスペシャリストを養成するところもあるし、「MOTは、CTO、MBAはCEOを目指す」と言っている大学もある。その学科の先生と議論したことがある。何も全員が社長を目指せと言っているわけではない。組織としての研究所だとか、工場だとか、その組織の長を目指すべきだ。MOTのゴールはCTOを目指すというのは駄目である。
技術系の最高責任者はCTOであるが、会社の組織でCTOは、副社長で技術担当とか、技術担当役員とか、技術問題の責任を有するとともに、社長に対しての"Report to CEO"で、技術問題に対して具申をするということでNo2の位置付けである。

経営に携わる限り組織のトップ(CEO)を目指さないと駄目である

やはり組織はその組織の長を目指さないと駄目である。だからCTOが引き込み線では駄目で、下の人はCTOが技術の最高責任者ではあるが、「この人はこの組織の最高ポストの目はなく、ここが引き込み線で次は引退よ」というのと、「この次この人は社長になるよ」と言うので下の見る目が違う。だから、結果としてCTOで引退するケースはあってもが、その組織において頑張っている限りはCEOへの目があることが基本である。
技師長(CTO)もやったし、CEOもやった。事業部の技師長時代に、上司の技術担当副社長は「今日の事業の責任があるのは事業部長、明日の事業に責任があるのは技師長である」と言っていた。事業部長は毎年の数値に対して責任がある。技師長は先を見て、明日のビジネスに責任がある。先に手を打っておいた技師長が事業部長になるとそれが生きてくる。そこが重要なところである。

CTO:Chief Technology Officer(技術最高責任者、技術統括役員)

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「やはり組織はその組織の長を目指さないと駄目である。
だからCTOが引き込み線では駄目でCEOを目指さないと駄目である」と語る講師の角忠夫氏。

MOT大学院の責務

MOT大学院の責務とは何か。

  • MOTは理論と実践が両輪で、実理融合である。
  • 実践なき理論は空虚であり、理論なき実践は無謀である。
  • 大學は理論(Generalize)の具象化を志向し、企業は実践(Specialize)の抽象化を志向することにより大学と企業の確かな協業と融合が生まれ、MOTの評価と定着が期待できる。

現場でどう生きるかの観点が無い講義は無意味である。MOTは実学である。儲けてなんぼである。実践ばかりで、「ここで成功しましたよ」「これだけ儲けましたよ」では、それはその部門だけでの実績をいくら教えられても概念化、Generalizeゼネライズされていないと他部門では生きない。そこが企業に欠けている問題である。自部門でのサクセスストーリーを聞いて、他部門にどのように転用できるかのスペシャライズの事象をゼネラライズする知識と見識がなかったら、1回話を聞いたら終わりになる。
これがMOTの神髄である。理論と実践とがあって、この理論を現場で使うにはどうしますか。良い話を聞いても現場で使えない。現場で使ったらこんな問題が発生したということをMOTのクラスにフィードバックする。

ケーススターディだけでなく、併せて理論をしっかり勉強すると良い

理論と実践の話で大学の工学部であれば実験をする。MOTではケーススターディをやる。ケーススターディは良いが、ケーススターディと全く同じ経営現場はあり得ない。だからベースとなる理論をしっかり勉強して、理論を具象化するためのいくつかの適切ケーススターディをやれば良いと考えている。
米国のMBAでは2年間に50ケースや150ケースを寝る時間も無くやってみても、英語でケーススターディをいくらやっても現場に生かせない。理論をしっかりしたうえで、ケースA、ケースB、ケースC、ケースDをやったら今度は現場でやる。このような修士論文を作ったら会社は評価する。こういうことを今のMOTはもっと、もっとやらなければいけない。勉強したことが組織で活用実践することが大事なこと。MOT修了者はMOTで勉強したことを個人のみでなく組織に普及することが重要である。

図7 管理能力配分 MSM(Management Skill Mix)

図7 管理能力配分 MSM(Management Skill Mix)

MOT受講生の使命

MOTは理論と実践の両面を具備しなければ水泡に帰す。企業は大学院でのMOT受講の成果を現場で具現化して初めて評価する。MOTを出ただけでは、日本の企業は評価しない。現場で生きて現場の数値が変わったら、評価されるようになる。
日本企業における20世紀のMBAに対する評価と実績を他山の石として、21世紀のMOTマスターが日本企業で宝石を散りばめたごとく輝いてこそグローバル市場における日本企業の未来がある。MOT受講生の使命はここにある。

MOTのゴールがCTOというのはとんでもない

社長(CEO)が沢山必要でもなく、MOTのゴールに多様性があることは必要で大切なことである。しかし目指すべき最高峰CEOであるべきである。CEOを目指す目的は出世、金欲ではない。企業において「志」「夢」の実現の最も確かな手段が、組織の長であるCEOを目指すことなのである。だからMOTのゴールがCTOではあってはならない。
結果的にCTOであるということは当然あり得ることで、結果論である。

MOT大学院のラディカルイノベーション

MOTコースは何を目指すのか。ジャックウエルチ(米国GE社元社長、20世紀の最大の経営者と言われている)が、
Control Your Destiny, or Someone else will?   by Jack Welch, former CEO of GE,「自分の面倒を自分が見ないで誰が見てくれると言うのか?」by T, Sumi訳
JAIST(北陸先端科学技術大学院大学)のMOTコースでの「技術マネジメントリーダーシップ実践論」でのワークアサインメントでは、受講者にテーマ「私のCDP」(注)というテーマを与えて発表して貰っている。

(1)現在までのキャリアパス   学生時代から現在までの年代別獲得した経験、知識、手法、人脈など今後のキャリアパスに有効だと思われるものを選択して記述する。

(2)今後のキャリア計画  明確な職業的ゴールと、コンテンジェンシープランも加え、それにいたるまでの望ましいキャリア計画を立てること。

(3)自分のSWOT分析を行え  (2)を達成するために、(1)の実績に基づきSWOT分析を行う。

(4)今後の研鑚計画  (1)、(3)を踏まえ、(2)を達成させるためにどのような自己研鑚教育を実行するか?OJT、Off-JT、具備すべきウエポン、資格、必要期間、投資なども含めることが望ましい。

(注)CDP:Carrier Development Programの略

企業で研究職のみの経験者は不適格である

先生(Teacher)

学科長は、経営の経験があった方が良い。耳学問では駄目で企業、実践に関心、経営の経験があり、教育に強い関心実績のある企業人が良い。企業で研究職のみの経験者は不適格である。企業経験があっても経営経験がゼロである。企業経験があると思っていることがもっと悪い。
企業での経営経験がある方で教育に対する情熱のみならずスペシャライズからゼネラライズへの抽象化の知識、見識が無かったら90分の1コマとか2コマで終わってしまう。講義の授業参観、講義をクロスでやるべきである。
学科長は講義を評価しなければならない。学科長は先生を評価し全部を掌握できなければならない。人を育てるには、時間と忍耐がいる。2年間で卒業した後も、会社でどうしているかが重要である。同窓会でワイワイやっているだけではアフターケアをやっていることにはならない。個人対個人で必要な情報を送ってやらなければならない。

生徒(Participants)

入学の目的やミッションを明確にする。受講に当たって大学院での達成目標を学科長やゼミ長にしっかり伝えておく。自分のCDPを作成し、協力を求めておく。
目的、ゴールは多岐にわたってもいいが、MajorityはCEOである。修士論文、卒業研究が次の人生で有力な武器になるテーマを選ぶ。受講生は自分の目的をきちんという。その組織のリーダーを目指す。MOTの教育は2年間だけでなく、その後も師弟関係が続く必要がある。責任もって、目的が多面的であって良いが、組織のリーダーを目指す。

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「学科長は、経営の経験があった方が良い。耳学問では駄目で企業、実践に関心、
経営の経験があり、教育に強い関心実績のある企業人が良い」と語る角講師。

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質疑応答

CEOになるつもりでいないと急にCEOは出来ない

質問(加藤史洋 元MMPS受講生):CTOというのは、技術のトップであって、経営に参画できないという前提があってCTOを目指すべきでなくCEOを目指すべきということか。

回答(角忠夫講師):会社によって違うが、会社は多面的になっているので1人で経営できないので2人3脚で取り組む。技術系の会社は、技術が大事で、技術のスペシャリティー、技術者の管理・育成が大事である。その責任をCTOは負ってCEOにレポートする責任がある。会社全体の経営という点から言ったら、CTOの責任は一部分である。その他、営業の問題、IRの問題など沢山ある。トータルの結果として3月末の業績がでる。例えばCTOが副社長で技術担当役員というのと、代表取締役社長というので、平取からみても違いがある。処遇はずいぶ近づいていると思うが、会社のマネジメントは、組織の長が絶対である。一番望ましいのはCTO経由CEOになるのはキャリアパスとして望ましい。結果としてCTO止まりとなるのは当然あり得る。CTOがゴールと言われてしまうと、それは技術者が惨めになる。CTOというポジションだけでは完結しない。CEOになるつもりで取り組んでいないとCEOは出来ない。CEOになるまでに人財をいかに育てておくかというのが重要である。

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「CTOというのは技術のトップであって、経営に参画できないという前提があって
CTOを目指すべきでなくCEOを目指すべきということか」と質問する加藤氏。

MOTの先生は生徒の面倒を終生見届けなければならない

質問(寺尾謙芝浦工業大学職員):マネジメントスキルの中で技術的能力、管理的能力、人間的能力の中で、MOT教育で人間的能力が足りてないと思う。技術者倫理などの倫理教育をすべきだと思う。実践されている教育の中で、人間的な能力を伸ばす教育をしているのであれば紹介して欲しい。

回答(角忠夫講師):それが書かれているのが、『エンジニアリングマネジャー –強き技術系管理者への道-』バダウィ著・角忠夫訳である。バダウィは大学一筋であるが米国MOT大家の一人である。米国の先生は、企業を行ったり来たりしている。翻訳に当たり、日本の経営現場では彼の言っていることはこういう事なのだとの意味を理解して取り組んだ。7か国で翻訳されていると言っていた。憎らしいほど教育と企業の中の問題を客観的によくとらえている。バダウイは大学時代にドラッカーやデミングに師事していた。工場の部長の時代にハードウェアからソフトウェアに大きく転換期の時代に、ソフトウェアエンジニアが著しく欠乏しており、ソフトウェア技術者の管理教育をどうするかと悩んでいる時代にバダウイの記事に出会った。人間力の育成は師弟関係を繋がってやっていかなければ出来ない。これはという部下は海外出張に連れていった。人間苦しくなった時にどのような振る舞いをするかで人間を評価している。MOTの先生は生徒数が精々30人程度であり、面倒を終生見届けるような先生になっていただきたい。

雑用をマネージすることで仕事の状態が見えてくる

質問(坂巻資敏元リコー常務執行役員):MOTを教えるのは、CEOを教えないと駄目だ。しかし、文部省がCEOを育てるとなっていない。もう一つは新入社員の3分の1は社長を目指すと言った。ところが最近の私入社員は「社長は嫌です」という。MOTを受けに来る方たちが知識を学んで帰る。キャリアに箔を付けて帰る。本当に勉強して会社を良くしようと思って参加しない。問題は大手からくる学生はそういうマインドではないと思うがいかがか。

回答(角忠夫講師):中小企業からの生徒は会社からの派遣で会社が負担してきている。自分で手を上げる人も何人かいるが、次はお前よとやっている。10年やっていると最初は社長が来て、次に役員が来て、部長が来て、課長か来て・・こうなる。社内では教育しきれないことをMMPSでは教育して、経営のテクニカルタームやマインドを学ぶことが出来ている。
今の新入生は社長ところか課長になることも嫌っている場合が多い。課長になったら、残業管理とか、出勤率とか、納期の問題とか、最近は男子も育児休暇など色々と起こる。そういうことは技術屋からみると雑用と思う。
雑用をマネージすることで、それぞれの仕事の状態とか、プロダクトビリティーとかの色々な事がその雑用の中から見える。トータルとして、設計のアウトプットを最大化する。その時に設計の図面やプログラムだけをチェックしているのか、あるいは残業管理や育児休暇とかを含めてトータルな管理をすることにより問題点が見えてきてメンバーをチェンジしなければならない事などが見えてくる。自分のキャリアをポジティブに使ってCEOというゴールに近づける考えが大事である。それは企業内で上司が教えなければならないと思う。

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「バダウィは大学一筋であるが米国MOT大家の一人である。米国の先生は、企業を行ったり来たりしている。
憎らしいほど教育と企業の中の問題を客観的に良くとらえている」と語る講師の角氏。

最低限、法律とか、経済の問題を具備しなければならない

質問(小平和一朗専務理事):吉久保信一先生、法務の話題が出ていましたが、会社法的にこういう法律は抑えるべきだというアドバイスはありますか。

回答(吉久保信一弁護士):先ほど先生のおっしゃった会社法とか、労働法とか、知的財産などの色々な法律がある。

回答(角忠夫講師):法律とか、経済の問題とか、M&Aとか、アライアンスとか沢山あって、社内ロイヤーや顧問弁護士などの専門家はいて意見具申してくれるが、全部社長に上がる段階ではそれぞれが全て正しいが、その中で最後にどれを選択して判断するかは、それまでにそういうことに対してどれだけ経験があるか、どれだけ精通しているか、自分側で他人の意見を判断できるものが無かったら結局判断できないし、専門家任せの意見になって答えは日の目を見るように明らかである。専門家からの具申はあっても最後の判断は社長しかいない。打率を高めるには、それまでのキャリアパスと日常的にどうしているかだ。

以上

(参考文献)

『エンジニアリングマネジャー  - 強き技術系管理者への道 — 』バダウィ著、角忠夫訳

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